Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 1

(S737)

針生検では診断困難な腫瘤像非形成性乳癌を見落とさない為に有用な超音波検査所見とは

What are the ultrasound findings to reduce oversights of breast cancers with the non-mass abnormalities not diagnosed by core needle biopsy?

山久 智加, 五月女 恵一, 十山 由理, 佐瀬 久恵, 田島 花菜, 松本 純, 吉沼 孝, 深町 茂, 江口 正信

Chika YAMAHISA, Keiichi SOTOME, Yuri TOYAMA, Hisae SAZE, Kana TAJIMA, Jun MATSUMOTO, Takashi YOSHINUMA, Shigeru FUKAMACHI, Masanobu EGUCHI

1公立福生病院医療技術部臨床検査技術科, 2公立福生病院診療部外科, 3公立福生病院診療部病理診断科

1Department of Clinical Laboratory, Fussa Hospital, 2Department of Surgery, Fussa Hospital, 3Department of Clinical Pathology, Fussa Hospital

キーワード :

【はじめに】
臨床的に非浸潤性乳管癌(以下DCIS)を疑い針生検(以下CNB)を施行しても,病理組織診断にて乳腺症の構成成分の一つである乳管乳頭腫症(以下duct papillomatosis)と診断されることを時に経験する.そこで今回duct papillomatosisと診断された症例に対して,CNB以上の精査をするか否かの指標となりうる超音波画像(以下US)所見につき検討した.
【方法】
2014年4月1日から2017年11月30日の期間に全ての診療科より提出された病理組織検体12,824件のうち,乳腺関連が2,156件.乳房内病変に対してCNBを施行した症例は1,385例.これらのうち病理組織学的にduct papillomatosisもしくはductal hyperplasiaと診断された症例431例を抽出した.そのうちマンモトームないし摘出生検を含む手術が施行された腫瘤像非形成性病変28例(6.5%)を対象症例とした.検討項目は年齢,触診における触知の有無,病変の長径,分類(斑状,地図状,境界不明瞭),分布(区域性,領域性,限局性),血流シグナル(avascular, hypovascular, moderate vascular, hypervascular),つくば弾性スコア(score1, 2, 3, 4, 5),CNB採取本数とした.これらの項目を最終的な病理診断が良性であった群と悪性であった群に分けて検討を行った.解析にはJMP ver.8を用いて,連続変数に対してはMann-Whitney検定,その他はカイ二乗検定とFisherの正確検定を行い,p値0.05以下をもって有意差ありとした.
【結果】
良性15例,悪性13例で,悪性はDCIS 5例,DCIS成分を周囲に認める浸潤性乳管癌(以下IDC)が8例あり,有意差が得られた項目は病変の長径とつくば弾性スコアであった.病変の長径における良性群の中央値は23.5〔20.0~38.0〕mmであったのに対し,悪性群では13.3〔7.5~27.7〕mmと有意に短かった.つくば弾性スコアにおいてscore5の症例は認められなかった.また良性群ではscore1と2のみでそれぞれ同数であった.そこでscore1/2,score3/4に分けて検討したところ,有意差を認めた.悪性群の内,つくば弾性スコアがscore3/4の症例は全てDCIS成分を周囲に認めるIDCであった.また,悪性群のほとんどの症例はLuminal Aで核異型度は1であった.
【考察】
US上,区域性とするほどの病変の広がりがなく診断に迷う腫瘤像非形成性病変において,つくば弾性スコアから DCIS成分を周囲に認めるIDCが見出される可能性が示唆された.したがってCNBで良性の診断であっても,US上ひずみの低下が認められる場合には,DCIS成分を周囲に認めるIDCである可能性を念頭におく必要があると考えられる.しかし,DCISにおいてはduct papillomatosisやductal hyperplasiaとUS上,明らかな違いは認められず,US所見のみでCNB以上の精査をするか否かを判断することは困難であり,MRI等他のモダリティと併せて判断する必要があると思われる.