Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 1

(S737)

音響流観察による濃縮嚢胞診断に関する検討

Investigation towards complicated cyst diagnosis and characterization by acoustic streaming

金山 侑子, 大栗 拓真, 神山 直久, 横溝 十誠, 橋本 秀行

Yuko KANAYAMA, Takuma OGURI, Naohisa KAMIYAMA, Jissei YOKOMIZO, Hideyuki HASHIMOTO

1GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部, 2川上診療所, 3ちば県民保健予防財団総合健診センター乳腺科

1Ultrasound General Imaging, GE Healthcare Japan, 2Kawakami Breast and Thyroid Clinic, 3Division of Breast Screening, Chiba Foundation for Health Promotion and Disease Prevention

キーワード :

【背景と目的】
濃縮嚢胞は充実性腫瘤との鑑別が困難な場合がある. push pulse(PP)を照射して音響流発生の有無を見ることで嚢胞の鑑別診断を行なう試みはあるが,臨床適用は限定的である[1].また,単純なBモードで肝血管腫内に音響流を観察した報告もある[2].そこで,嚢胞内の音響流がBモードで観察できるか,また,PP照射を付加することで嚢胞の存在診断のみならず内部性状診断ができるか検討した.
【対象と方法】
LOGIQ E9(GE Healthcare)を使用し,乳腺濃縮嚢胞疑いの20例において,プローブを静止させ3秒程のBモード動画を取得後,嚢胞内領域でフレーム間相関を算出した.また,嚢胞を模擬してファントム内に液体貯留部を作成し,同様に動画を取得した他,SWEモードを利用して液体部分にPPを照射し,その前後の動画を取得して同様に相関算出を行なった.さらに,SWEモードの際にIQデータを取得し,PP照射後の変位を観測した.液体貯留部は直径10 mmおよび3 mmを用意し,水に散乱体を混ぜて輝度を3種類調整した他,高粘性媒質も用いた.
【結果と考察】
臨床データでは,周囲組織と比べて嚢胞内ではフレーム間相関が低下したが,低輝度腫瘤や音響陰影部においても同様の傾向が見られ,嚢胞を特異的に区別するのは困難だった.ファントムでは,液体部分の相関は輝度によらず周囲よりも有意に低下したが,その差は極僅かであり,臨床データは手振れや体動の影響を受けていたと思われる.一方,PPを照射すると液体部分に明瞭な流動が観測された(図1).輝度が大きいほど発生する音響流の速度は大きく,これは音響放射力が散乱体による超音波吸収量に比例するためと理解できる.また,液体貯留部の径が小さい場合や,液体の粘性が高い場合,発生する音響流の速度は小さく減弱も早かった.これは,径が小さいと粘性の影響が大きくなるためと考えられる(図2).
【結論】
臨床において音響流を観測するためにはPPの利用が有効である.嚢胞内部の流動の方向や時間変化を見ることで性状診断もできる可能性があるが,粘性や散乱体密度の他,径の影響も受けるので注意が必要である.

【参考文献】
[1]Soo et al. Am J Roentgenol 2006;186(5):1335
[2]飯島他,日超医第73回学術集会, 73-M17(2000)