Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児行動・予後予測他

(S727)

胎児の腕頭動脈・右鎖骨下動脈異常の描出法と診断について

Prenatal depiction and diagnosis of abnormal brachiocephalic artery and right subclavian artery in fetus.

青木 昭和

Showa AOKI

宇治徳洲会病院産婦人科

Obstetrics & Gynecology, Uji Tokushukai Medical Center

キーワード :

【はじめに】
右鎖骨下動脈起始異常はダウン症のソフトマーカーとして扱われる.一方,右鎖骨下動脈起始異常の診断はthree-vessel tracheal view(TVTV)で行うとされているが,正確な診断には起始部の同定や大動脈アーチ血管・気管との位置関係が重要である.今回,正常例および起始異常疑い症例において多断面による腕頭動脈(BCA),鎖骨下動脈(SCA),総頸動脈(CCA)の観察を行い,知見を得たので報告する.
【対象及び方法】
気管の前方ないし後方に右に向かう長い血管を認める4症例(異常例),及びそれらを認めない20症例(正常例)を対象とし,短軸断面に冠状断面を加え大動脈アーチ3血管,気管の位置関係を把握しながら観察した.
【結果】
正常例:短軸断面でBCAは気管やや左側で起始し,気管前を右方に走行していた.冠状断面では気管右側で右SCAと右CCAに分岐していた.異常例1(気管前の血管):短軸断面でCBA起始部が正常例より左方に位置し,走行部位は気管前で正常だったが,起始部から分岐部までの距離が長く,気管前に大きく横行する形となっていた(a).腕頭動脈延長症と診断した.異常例2と3(気管後の血管):短軸断面で気管後方を左→右に横行する血管を認めた(b).冠状断面では,その起始部は動脈管合流部よりやや遠位の大動脈で(c),気管左側をまわって気管後方を右方に走行し右上肢に至っていた.右CCAは大動脈弓から起始し気管前を横切り右側に単独で走行していた.その他の左SCA,左CCAには異常を認めなかった.以上より右鎖骨下動脈起始異常と診断した.合併奇形はなかった.異常例4(気管後の血管):短軸断面では気管後方を左→右に横行する血管を認めた.冠状断面ではこの血管は大動脈弓第1枝として起始し(d),気管右側で右SCAと右CCAに分岐していた.気管前には特別な血管は認めなかった.以上より腕頭動脈走行異常(気管・食道後タイプ)と診断した.AVSD,口唇口蓋裂を合併しtrisomy 21であった.
【結論】
正常胎児では腕頭動脈は気管のやや左側で起始し気管の前を横行する.稀に腕頭動脈が延長している時もある.また従来TVTVで診断された右SCA起始異常と腕頭動脈走行異常との鑑別には冠状断面が有効であった.成人時の気管切開に注意する事や気道圧迫の報告もあり正確な診断は有意義と思われた.