Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児行動・予後予測他

(S725)

妊娠36週までの超音波胎児計測値が巨大児出生の予測に有用であるか?

Prenatal diagnosis of macrosomic births at gestational weeks 36

王 良誠, 堀内 功, 佐々木 重胤, 高橋 英幹, 桑田 知之, 高木 健次郎

Ryosei O, Isao HORIUCHI, Shigetane SASAKI, Hideki TAKAHASHI, Tomoyuki KUWATA, Kenjiro TAKAGI

自治医科大学附属さいたま医療センター周産期母子医療センター母体胎児部門

Perinatal and maternal Center, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, Japan

キーワード :

【緒言】
体重4000g以上の巨大児分娩は出産時に肩甲難産および腕神経叢損傷が発症するリスクが高く,産後に産道損傷や分娩後出血の発症率も高いことが知られている.そのため,分娩前に巨大児であるリスクを把握し,早めに分娩誘発等の対策を講じることは重要である.
しかし一方では,出生前の超音波計測による巨大児の正診率は17~75%との報告があり,陽性的中率にもばらつきがある.このため本当に巨大児と診断して,早めに誘発分娩して良いかについては疑義が残る.
【研究目的】
妊娠36週の超音波胎児計測値が巨大児出生の予測に有用であるか検討した.
【研究方法】
2008年1月から2013年12月まで当院で経験した2442症例を対象とした.この期間の巨大児出生率及び妊娠36週の超音波所見で巨大児の診断の有用性を検討した.
【結果】
上記期間中に巨大児で出産した症例は14症例で発生率は0.7%であった.36週健診時の推定体重から巨大児の出産に対してROC曲線で解析したところ,AUC 0.885,Cutoff値2609g,感度100%,特異度65.4%であった.陽性的中率は僅か2.7%で低かった.同解析法でBPD値から巨大児の予測はCutoff値が92.8mm,陽性的中率は1.6%,AC値から巨大児の予測はCutoff値が32cm,陽性的中率は8.0%で,FL値から巨大児の予測はCutoff値が71mm,陽性的中率は8.9%だった.ACとFLと共に上記Cutoff値を超えた場合は陽性的中率が37.5%へ上昇した.
【考察】
胎児体重の推定計算式は正規分布のデータから最も近い方程式を求めたもので,正規分布の両側に存在するグループは誤差が生じやすい.また,実際の臨床では,評価日から実分娩日までの期間が長いとそれだけ発育するが,早ければ早いほど頸管の熟化度にも差があるため,分娩誘発のタイミングは難しい.しかし妊娠36週の時点でACとFLと共に大きく成長した場合,出生体重が4000gを超える可能性は高くなる.
ただし,分娩誘発を行っても,必ずしも巨大児にならない可能性があることは,念頭におくべきである.
【結論】
妊娠36週の超音波検査で胎児推定体重による巨大児の陽性的中率は低い.妊娠36週までの胎児超音波計測値のみで,分娩誘発を計画する場合は,一定の確率で巨大児でない可能性がある事を説明しておく必要がある.また,ACとFLが2点以上大きければ,陽性的中率は上昇する.今後症例蓄積した上で,適切なCut-Off値等を提示していきたい.