Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
経会陰超音波・頚管評価

(S718)

骨盤底機能障害を有する未産女性に見出される肛門の損傷:発症機転と臨床的意義の検討

Anal sphincter and puboanalis muscle injuries in nulliparae with pelvic floor dysfunctions: their obscure pathogenesis and clinical implications

中田 真木, 上島 千春, 樋野 貴宏, 高橋 優, 佐藤 雅和, 小泉 美奈子, 荷見 よう子

Maki NAKATA, Chiharu UESHIMA, Takahiro HINO, Yu TAKAHASHI, Masakazu SATO, Minako KOIZUMI, Youko HASUMI

三井記念病院産婦人科

Department of obstetrics and gynecology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【目的】
出産による肛門禁制低下を防止するために,分娩時の括約筋防護と(損傷された)括約筋の適切な修復が提唱されている.超音波画像検査で分析すると便失禁症例の肛門括約筋はしばしば損傷されているが,超音波画像上の肛門括約筋損傷の生まれる機転については,必ずしも明らかになっていない.本報告の目的は,骨盤底機能障害を抱えているが出産経験のない女性の肛門括約筋と恥骨肛門筋を超音波画像所見によって分析し,これらの損傷と機能障害との関連に検討を加えることである.
【方法・対象】
超音波画像検査には,GEヘルスケア製のVoluson iと3D対応経腟プローブを使用した.まず電子スキャンにより後交連の近傍から肛門の横断面を描出し,ついでメカニカル単回スキャンにより肛門管を含む領域の3Dデータを取り込んだ.保存されたデータから肛門管の中央部を支点とする直交3断面と肛門を左右対象によぎる連続多断面を作成して肛門括約筋と恥骨肛門筋のインテグリティを評価した.骨盤臓器脱もしくは腹圧性尿失禁の治療を受けた未経産の症例で,最近1年以内の肛門・会陰の3D超音波画像データが保存されていた5症例を対象とした.
【結果】
患者の年齢は50-70歳,来診の動機は,1例は腹圧性尿失禁,他4例は骨盤臓器脱であった.これらの症例には,全例に4mm以上にわたる前方部の外括約筋断裂,2例に内括約筋の途切れと肛門粘膜のせり出し,3例に恥骨肛門筋内部のまだらな瘢痕化が見出された.骨盤困窮度質問票に回答した4例のうち3例が,軟便もしくはふつう便がもれることがあると回答した.
【考察・結論】
外肛門括約筋の前方部の離解と恥骨肛門筋内部の陳旧性損傷は,出産以外の機転によっても生じる.これらの損傷を保有することは,骨盤底支持能や肛門禁制が低下していることと関連を持つ可能性がある.