西井 彰悟, 瀬尾 晃平, イズデプスキ 龍也, 土肥 聡, 岩崎 亮祐, 高木 亮, 吉沢 晋, 梅村 晋一郎, 関沢 明彦, 市塚 清健

Shogo NISHII, Kohei SEO, Tatsuya IZUDEPSKY, Satoshi DOHI, Ryosuke IWASAKI, Ryo TAKAGI, Shin YOSHIZAWA, Kouichiro UMEMURA, Akihiko SEKIZAWA, Kiyotake ICHIZUKA

¹昭和大学産婦人科学講座, ²昭和大学横浜市北部病院産婦人科, ³産業技術総合研究所健康工学研究部門, ⁴東北大学大学院医工学研究科

¹School of Medicine,Department of Obstetrics and Gynecolgy, Showa University, ²Obstetrics and Gynecology, Showa University Northern Yokohama Hospital, ³Health Research Institute, Advanced Industrial Science and Technology, ⁴Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
強出力集束超音波（high-intensity focused ultrasound : HIFU）は出力の強い超音波を焦点に照射することにより熱エネルギーを蓄積し，照射点を加熱凝固治療させることが出来る．我々が従来胎児治療で使用してきたHIFUトランスデューサーは，照射点を加熱凝固できた一方，皮膚界面での母体の腹壁への熱傷を引き起こした症例がある．本研究の目的は，我々が従来使用していたHIFUトランスデューサーの照射方式を変えることにより，熱傷を予防できるかを目的とした．
【方法】
全身麻酔下の生後3か月の幼若豚を対象とした．焦点距離/開口径を下げた点と超音波照射パルスを分割照射できるように振動子を6分割にした改良型HIFUトランスデューサーを使用した．脱気冷却水を循環させたバック内にHIFUトランスデューサーをセットして照射を行なった．全面照射と6分割照射で皮膚熱傷の評価比較をした．TAPは200W，周波数は1.1MHzとし，照射時間は1回10秒間とした．全面照射と6分割照射をそれぞれ左右大腿内側4カ所に1回ずつ，計8カ所に対して同一験者が照射した．照射中の幼若豚へのHIFU照射の影響を調べるため血圧，脈拍，呼吸数，血中酸素濃度を照射前後連続的に計測した．実験動物倫理員会の承認を得て行なった．
【結果】
全面照射と6分割照射の照射部位の皮膚所見を比較した．全面照射は全ての部位で深達性Ⅱ度熱傷であった．6分割照射では深達性熱傷は認められなかった（表）．
熱傷の部位に関して，全面照射では周囲の発赤に加えて，照射部位に一致して硬結を触れる白色病変を認めた．6分割照射では，一部に白色病変を認めたが，点在するのみでであった．幼若豚の血圧，脈拍，呼吸数，血中酸素濃度は照射前後で変化は認めず，HIFU照射の影響は局所に限局していたことが確認された．
【結論】
焦点距離/開口径を下げたことにより，皮膚表面の超音波エネルギー密度が減少し，超音波吸収が抑えられた．さらに，6分割照射とすることで皮膚表面の定常波の発生が抑えられ，結果としてキャビテーションも抑えることで，熱傷の軽減に寄与したと考えられた．同出力下において，照射方式の違いによって熱傷は軽減させることができる可能性が示唆された．熱傷の軽減は，照射時間の延長や疼痛の軽減に寄与し，より正確な照射と合併症の軽減につながると考えられる．