Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 産婦人科
婦人科腫瘍

(S706)

腹部超音波検査は卵巣癌の小網と肝門部播種病変の検出に有用である

Preoperative abdominal ultrasonography is useful for the detection of lesser omental metastasis and portal metastasis.

新井 聡子, 石井 久美子, 松岡 歩, 錦見 恭子, 楯 真一, 尾本 暁子, 生水 真紀夫

Satoko ARAI, Kumiko ISHII, Ayumu MATSUOKA, Kyouko NISHIKIMI, Shinichi TATE, Akiko OMOTO, Makio SHOZU

千葉大学医学部附属病院婦人科・周産期母性科

Gynecology and Obstetrics, Chiba University Hospital

キーワード :

【緒言】
卵巣癌手術では,complete surgeryを目指すべきである.当科ではこれまで術前に造影CT(CT)で播種病変を評価し,complete surgeryの可否を判断してきた.しかし,開腹後に小網や肝門部に想定外の播種病変が判明し,試験開腹に変更せざるを得ない症例も少なからず経験した.そこで今回,従来のCTによる評価に超音波検査(US)を併用することで小網や肝門部の播種病変の診断精度が高まるかを前向きに検討した.
【対象・方法】
対象は,2014年10月から2017年11月までに卵巣癌を疑い当科で手術を施行した96症例.評価項目を小網と肝門部播種病変の有無とした.まず,術前1ヶ月以内にCTを撮影し,読影所見をCT単独の結果とした.次いで,CTを参照後にUSを施行し,同部位の播種病変の有無について検索を行った.USの陽性所見を,小網では肥厚・形状不正・結節があるもの,肝門部では肝円索・胆嚢周囲に結節があるものとした.その結果をUS併用とし,CTとUSの結果が異なる場合はUSの所見を優先した.これらCT単独とUS併用の結果を術中所見と比較し,それぞれの感度,特異度,正診率を検討した.CTは放射線科医と婦人科医でそれぞれ読影を行い, USは超音波検査士2名で評価した.
【結果】
96症例のうち,実際に小網病変があった症例は36例で,CT単独は陽性4例・陰性32例,US併用は陽性25例・陰性11例であり,US併用により感度は高まり(CT単独:11%,US併用:69%),特異度に有意差がなく(CT単独:98%,US併用:90%),正診率が高まった(CT単独:65%,US併用:82%).
【考察】
USの併用により,CTでは指摘できなかった21例で新たに小網病変が可能された.これは,CTではスライス幅以下の病変の指摘が困難であること,また,USではリアルタイムに詳細な観察ができることによると思われた.小網や肝門部に播種がある場合は,完全切除が困難な場合もありPDSかIDSかについて検討が必要である.術前CTに超音波検査を加えることで,術前により正確な評価を行うことができると考えられる.
【結語】
小網と肝門部播種病変について,CTにUSを併用することで診断精度を高めることができた.