Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓/症例

(S690)

腹部超音波検査で診断された膵動静脈奇形による膵炎の1症例

A case of pancreatitis due to pancreatic arteriovenous malformation diagnosed by abdominal ultrasonography

梶田 麻以, 平岡 淳, 奥田 安範, 新畠 由紀, 森 いづみ, 村上 大晟, 植木 秀太朗, 越智 麻理絵, 宮田 英樹, 二宮 朋之

Mai KAJITA, Atsushi HIRAOKA, Yasunori OKUDA, Yuki SHINBATA, Izumi MORI, Taisei MURAKAMI, Hidetarou UEKI, Marie OCHI, Hideki MIYATA, Tomoyuki NINOMIYA

1愛媛県立中央病院検査部, 2愛媛県立中央病院消化器内科

1Department of clinical laboratory, Ehime Prefectural Central Hospital, 2Department of gastroenterology and hepatology, Ehime Prefectural Central Hospital

キーワード :

【目的】
膵動静脈奇形(Pancreatic arteriovenous malformation,以下 膵AVM)は膵内で動脈系と門脈系の異常短絡吻合を呈する疾患と定義されており,急性膵炎や消化管出血の一因となる稀な疾患である.今回我々は腹部超音波検査で診断した膵AVMによる膵炎症例を経験したので報告する.
【症例】
61歳男性.3週間前より腹痛と嘔気があり,近医にて胃腸炎として内服加療された.その後も腹痛が持続するため救急受診.腹部単純CT検査にて膵炎と診断され前医に緊急入院するが症状の改善がなく,精査加療目的で当院に紹介となった.既往歴は虫垂炎,胆嚢摘出術,糖尿病.飲酒歴なし,喫煙歴あり(20本/日,40年),家族歴に特記事項なし.入院時検査所見:血清AMY 41 IU/L,Ca 9.0 mg/dL,ALB 3.7 mg/dL,WBC 7840/μL,CRP 3.19 mg/dL,HbA1c 6.4 %,CEA 2.8 ng/mL,CA19-9 11.6 U/mL,DUPAN-2 <25 U/mL,Span-1抗原 3.0 U/mL.
【画像所見】
腹部超音波検査で膵頭部は限局性に軽度腫大し,同部に約30×29mm大の不整形な低エコー腫瘤を認めた.カラードプラでは同部位に網の目状に描出される拍動性血流シグナルが検出された.また,腫瘤部より門脈起始部へと向かう血流を認めた.主膵管の拡張や膵石,膵周囲の液体貯留は認めなかった.同日に施行した膵Dynamic造影CT検査でも膵頭部周囲に細血管の増生を認めた.
【入院後経過】
膵AVMによる膵炎と診断し,投薬による保存的加療を継続したが腹痛が持続するため,疼痛コントロール目的で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)が施行された.
【病理所見】
肉眼的には,膵頭部の実質は萎縮・硬化し,出血や壊死を伴う病変部を認めた.組織学的には,膵実質は慢性膵炎所見を背景に,脂肪壊死,出血,急性炎症細胞浸潤などの急性膵炎所見が重複してみられた.弾性繊維染色の結果,病変部には厚さが不規則で動脈・静脈壁の組織像を併せ持つ血管や出血・血栓形成を伴う血管の増生が認められ,膵AVMによる膵炎と確定診断された.
【考察】
膵AVMは稀な疾患であり,臨床上重要となる合併症として急性膵炎や消化管出血が挙げられる.膵AVMに合併する急性膵炎は,腹痛などの自覚症状に比べて,血液検査値や画像所見の程度が比較的軽度のことがある.しかし,いったん発症すると再発を繰り返して臨床的に難治性となることが少なくないとされる.膵AVMの診断にはカラードプラ超音波検査の有用性が高く,モザイクパターンを呈する血流シグナルおよび拍動波の検出が特徴的な所見である.本症例においても,腹部超音波検査においてカラードプラにて網の目状に描出される拍動性の血流シグナルを呈する画像所見が得られ,膵AVMによる膵炎の診断に至った.
【結語】
稀な疾患である膵AVMによる膵炎症例を経験した.