Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓/症例

(S689)

膵臓超音波検査における体位変換と飲水法の効果の検討

The effect of water-intake and change of position in pancreas sonography

岡村 明彦

Akihiko OKAMURA

彩の丘クリニック

Department of gastrointestinal medicine, Sainooka Clinic

キーワード :

膵臓癌は,いまだ早期発見が困難で,その死亡率は高く,検診やスクリーニングでの有効な検査がないことが問題となっている.体外式腹部超音波検査は,簡便で無侵襲であるが,膵臓前方に位置する胃内のガスや残渣が障害となり,胃の背側に位置する膵体尾部が描出困難となることが少なくない.この対策として飲水により,膵臓前方に音響窓を形成することで,膵体尾部の描出能を向上させ,体位変換と合わせて,膵臓超音波検査の精度改善が期待できる.
【目的】
通常の腹部超音波検査において,飲水法と体位変換を併用して検査を行い,記録された画像をもとに,描出能を数値化し統計処理により,膵臓描出により効果的な飲水法と体位を検討した.
【方法】
腹部超音波検査における膵体尾部描出スコア(10段階)を考案し,各体位での描出範囲を定量化した.坐位,45度,臥位の3体位について,飲水法を行う前と後で,画像を保存した.飲水法は350mlの湯冷ましのお茶を使用した.検査終了後に全画像を再評価し,各体位で得られた画像の膵体尾部描出スコアを決定した.本法は通常の内科外来においてルーチンの待機的検査のなかで施行しスコアを得た.これをもとに飲水法,体位変換併用による各スコアの改善の効果,BMIとの相関,ストロー法による胃内エア低減対策の効果等を検討した.
【結論】
全部で439例のデータを得た.飲水前の膵体尾部描出スコアでは45度および臥位が,坐位よりも高く,飲水後でも同様の傾向であった.飲水による効果の検討では,臥位でのスコアは飲水法により平均2以上改善し,坐位,45度の体位でも同様の改善が認められた.最も高い平均スコアが得られたのは飲水後の右側臥位で,他の体位でのスコアが全体に低値でも膵体尾部の描出が良好となる症例が認められ,飲水法において併用すべき体位であると考えられた.全症例中,検査の効率化と患者負担低減のためスコアの評価,再検討を行い,飲水前の坐位及び45度の検査を省略可能が適当と思われ,後半で検査体位の簡略化を行った.またBMIのとの関連では,飲水前・臥位ではBMIが大きいほどスコアしは低く,BMIと-0.32の逆相関が認められた.飲水後のスコアも飲水前より全体に改善はするものの,やはり同様の逆相関が認められた.BMIが30以上では飲水前スコアは著しく低いが,飲水法,右側臥位法により,スコアの改善する例を認めた.全検査症例中,神経内分泌腫瘍1例,膵臓癌1例を診断する契機を得た.また飲水前にては認めず,飲水後の検査でのみ描出しえた膵体尾部の嚢胞性疾患3例を認め,いずれも飲水法により詳細な描出が可能であった.また,飲水法は膵臓外病変の描出にも有効で,悪性リンパ腫1例を診断する契機となった.この症例では肥満症例であったが,飲水法により膵周囲の描出が良好で病変が指摘可能であった.
【結語】
飲水法,体位変換併用の膵臓超音波検査は簡便で無侵襲で,膵体尾部の描出能を著しく向上させる効果があり,膵臓スクリーニング検査においては併用すべき有用な方法であると思われた.