Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ 2

(S682)

うっ血肝症例のDispersion Imaging(粘性)の検討

The dispersion Imaging of passive hepatic congestion

高田 珠子, 畠 二郎, 竹之内 陽子, 谷口 真由美, 岩崎 隆一, 妹尾 顕祐, 中藤 流以, 今村 祐志, 眞部 紀明

Tamako TAKATA, Jiro HATA, Yoko TAKENOUCHI, Mayumi TANIGUCHI, Ryuichi IWASAKI, Kensuke SENO, Rui NAKATOU, Hiroshi IMAMURA, Noriaki MANABE

1川崎医科大学検査診断学, 2川崎医科大学附属病院中央検査部, 3川崎医科大学消化管内科学, 4三菱三原病院内科

1Clinical Pathology and Laboratory medicine, Kawasaki Medical School, 2Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 3Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 4Internal Medicine, Mitsubishi Mihara Hospital

キーワード :

【背景】
うっ血肝を疑う超音波所見として,肝腫大,下大静脈の拡張と呼吸性変化率の低下,肝静脈・門脈の血流波形の変化などの間接的所見が挙げられるが,肝臓のうっ血そのものを評価するパラメータの報告はない. Shear wave(SW)elastographyにおけるSWの伝搬速度は,肝臓の弾性と粘性によって決められるが,うっ血肝で認められる伝搬速度の上昇は主にうっ血による粘性の増加が寄与していると考えられている.近年SWの周波数分散性を利用することにより粘性(dispersion imaging)を評価することが可能となった.
【目的】
うっ血肝症例の粘性dispersion(m/s)/kHzを測定し,①正常群との比較,②うっ血の指標(肝胆道系酵素,下大静脈の径と変化率),左心機能の指標(BNP,左室駆出率(EF))との相関を評価する.
【対象と方法】
2017年1月~12月までに当院で経験した,他の肝疾患を有さないうっ血肝症例7例(不整脈原性右室心筋症1例,低左心機能1例,虚血性心疾患1例,拡張型心筋症1例,心房細動3例)と基礎疾患を有さない正常肝症例27例を対象に,東芝社製アプリオi900,475BXプローブを用いて肝実質の粘性dispersion(m/s)/kHzを測定した.右肋間から肝右葉を描出し,多重反射やサイドローブの影響のない部位にROIを設定し,うっ血肝症例群は3回測定した平均値を,正常群は5回測定し最大値と最小値を除いた平均値を算出し,①うっ血肝群と正常群の比較,②うっ血肝群において粘性dispersionとうっ血の指標(総ビリルビン,ALP, γGTP, 下大静脈の径と呼吸性変化率),左心機能の指標(BNP,EF)との相関について評価を行った.統計処理は,①Mann-WhitneyのU検定,②ピアソンの相関係数を用いた.
【結果】
①うっ血肝群の粘性は15.5±2.6(以下mean±SD)(m/s)/kHz,正常群の粘性は9.7±0.9でうっ血肝群において有意に高値を示した.(p<0.01)
②うっ血肝群において粘性と各パラメータは有意な相関を示さなかった.
T.Bil(r=0.52,p=0.41),ALP(r=0.77,p=0.41),γGTP(r=0.65,p=0.27),BNP(r=0.004,p=0.87),IVC径(r=-0.33,p=0.62),呼吸性変化率(r=0.65,p=0.28), EF(r=-0.21,p=0.76)
【考察】
今回の検討では,うっ血肝症例は全例粘性の増加(10(m/s)/kHz以上)がみられたが,その程度は肝胆道系酵素,下大静脈の径及び呼吸性変化率,EFなどとは相関しておらず,診断に有用な可能性は示唆されたが,重症度は表現していない可能性が考えられた.今後の課題として症例数を増やしての検討,同一症例での治療経過における変動の評価を行っていく予定である.