Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
エラストグラフィ 2

(S681)

急性肝障害患者のShear Wave Elastography測定

Shear Wave elastography measurement in patients with acute hepatic injury

須田 季晋, 大川 修, 白橋 亮作, 徳富 治彦, 金子 真由子, 行徳 芳則, 正岡 亮, 正岡 梨音, 玉野 正也

Toshikuni SUDA, Osamu OOKAWA, Ryosaku SHIRAHASHI, Naohiko TOKUTOMI, Mayuko KANEKO, Yoshinori GYOTOKU, Ryo MASAOKA, Rion MASAOKA, Masaya TAMANO

獨協医科大学さいたま医療センター消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
Shear Wave Elastography(SWE)を用いた剪断波速度(Vs)の測定は,びまん性肝疾患の線維化予測に有用とされている.しかし,肝硬度は組織の弾性(線維化)のみで決まるのではなく,粘性(炎症)にも影響される可能性がある.今回我々は急性肝障害患者における,Vs値とその変動について検討した.
【方法】
肝疾患の既往がなく,急性肝障害で当科を受診した37名を対象とした.常習飲酒家は対象から除外した.対象は男性17例,女性20例,平均年齢は43.1±17.1(17-78)歳であった.肝疾患以外で当科を受診し,SWEを施行した肝機能正常患者50例を正常対照とした.SWEの測定にはGE Healthcare社LODIQ-E9を用い,空腹時にBモード観察下に右肋間から10回計測して中央値(Vs: m/s)を検討に用いた.SWE測定同日のALT,ビリルビン,アルブミン,白血球,ヘモグロビン,血小板,プロトロンビン活性とVsの相関について検討した.
【結果】
病因の内訳はHAV2例,HBV10例,HCV2例,EBV5例,自己免疫性肝炎の急性発症5例,薬剤性肝障害1例,原因不明12例であった.急性肝障害群のVsは1.66±0.38(1.00-2.41)m/s,正常対照群のVsは1.22±0.13(1.00-1.41)m/sであり,急性肝障害群で有意に高値を呈した(p=0.00001).病因別に検討すると,HAV,HBV,HCV,EBV,自己免疫性肝炎の急性発症,薬剤性肝障害,原因不明のVsの平均はそれぞれ,1.38±0.07 m/s(1.33-1.43),1.84±0.28 m/s(1.43-2.37),1.69±0.47 m/s(1.36-2.03),1.35±0.17 m/s(1.20-1.64),2.11±0.28 m/s(1,78-2.41),1.78±0.00 m/s,1.47±0.33 m/s(1.00-2.11)であり,症例数が少なく有意差は認めないものの,HBV例と自己免疫性肝炎の急性発症で高値を呈する傾向がみられた.VsはALTと正の相関を認め(r=0.5124),アルブミン(r=-0.4395)とプロトロンビン活性(r=-0.5024)とは負の相関を認めた.ビリルビン,白血球,ヘモグロビン,血小板との相関は認めなかった.ALTが40以下に改善した時点でSWEを再検できた症例は13例であった.この13例の初診時のVsは1.82±0.43(1.33-2.41)m/sであり,ALT改善後のVsは1.35±0.19m/s(1.13-1.82)と有意な改善が認められた(p=0.0002).【考察】
Vsは一般的に肝の線維化の指標とされるが,今回の検討では肝疾患の既往がない急性肝障害患者において高値を呈することが確認された.急性肝障害患者のVsはALTと相関し,肝障害の改善によって低下することから炎症によって上昇したものと推測された.一方でVsはアルブミン,プロトロンビン活性とは負の相関を呈し,急性肝障害時の肝予備能の指標となる可能性が示唆された.【結論】
急性肝障害時にはSWEで測定したVsは上昇していた.Vsは肝障害の改善に伴って低下し,肝の炎症を反映したものと思われた.