Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓/その他/症例

(S667)

診断に難渋した細胆管細胞癌の一例

A case of Cholangiolocellular carcinoma with difficulty in diagnosis.

中村 雅美, 梶原 淳, 畠野 尚典, 飯干 泰彦, 出村 公一, 今里 光伸, 金 浩敏, 今北 正美, 位藤 俊一, 伊豆蔵 正明

Masami NAKAMURA, Jun KAJIHARA, Hisanori HATANO, Yasuhiko IIBOSHI, Kouiti DEMURA, Mitunobu IMASATO, Ho Min KIM, Masami IMAKITA, Toshikazu ITOU, Masaaki IZUKURA

1地方独立行政法人りんくう総合医療センター検査科, 2地方独立行政法人りんくう総合医療センター外科, 3地方独立行政法人りんくう総合医療センター病理部

1Department of Clinical Laboatory, Rinku General Medical Center, 2Department of Surgery, Rinku General Medical Center, 3Department of Pathology, Rinku General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
細胆管細胞癌は原発性肝癌の0.56~1%と比較的稀な腫瘍であり,慢性肝炎を背景として発症することが多いとされる.今回我々は腫瘍サイズの変化に乏しく診断に難渋した細胆管細胞癌の一例を経験したので報告する.
【症例】
60才代,女性
【既往歴】
58才上行大動脈解離,61才乳癌,62才甲状腺癌
【現病歴】
乳癌術後経過観察の超音波検査にて肝左葉に腫瘤を指摘された.
【入院時検査所見】
RBC 382×104/μℓ,Hb 11.0g/dl, Plt 18.9×104/μℓ,AST 21 IU/l,ALT 17 IU/l,γ-GTP 18 IU/l,ALP 270 IU/l, T-Bil 0.3mg/dl,ALB 4.1g/dl,CRP 1.4mg/dl,CEA 3.8ng/ml,CA 19-9 17.8 U/ml,AFP 13.1 ng/ml,
PIVKA-Ⅱ 29 mAU/ml,Child-Pugh A(5),HBAg(-),HCVAb(-)
【超音波検査】
肝S2に7×7mmの境界明瞭,内部エコー均質な低エコー腫瘤を認めた.カラ-ドプラ法では血流シグナルは認めなかった.Sonazoid®造影超音波検査では動脈優位相で腫瘤内部は均一に染影された.門脈優位相では周囲肝と同程度に染影され微細血流を認めた.後血管相で造影欠損像を呈した.【腹部Dynamic-CT】
早期相で濃染するもwash outは不明瞭であった.【腹部EOB-MRI】
T2強調画像では同定困難で,Dynamic studyでは早期濃染は不明瞭,肝細胞相では腫瘍への取り込み低下が認められた.【経過】
短期経過観察での画像所見では腫瘤サイズの変化を認めず,血中AFPは13~17 ng/mlで推移した.腫瘤出現4年4ヶ月後,腹腔鏡下肝外側区域切除術が施行された.【病理組織所見】
S2に10mmの境界明瞭な白色の充実性腫瘤を認めた.類円形の核を持つ比較的均一な細胞が管状,索状を呈して増生し,線維性間質を伴っていた.背景肝には軽度の線維化を認めた.免疫組織染色ではCK7, CK19染色陽性, Hepatocyte,AFP, CEA, ER, PgR染色陰性, EMA染色では膜状陽性を呈し細胆管細胞癌と診断された.
【考察】
本疾患は1959年にSteinerらによりHering管ないし細胆管に由来する疾患として報告され,組織学的には細胆管増生に類似した鹿の角状の吻合状腺管・小型単一腺管が硝子化~浮腫状の線維性間質を伴い増殖する.約4割でウイルス性肝炎を認め,血中AFPの上昇を伴うこともあるとされる.海津らは半年~4年間観察された8例について検討し増大速度が0~2.7mm/月で比較的緩徐な発育を示したとしている1).自験例でも腫瘍径の増大は乏しかった.超音波検査では低エコー結節を呈することが多く,造影超音波検査では動脈優位相で早期濃染または樹枝状濃染し門脈優位相では造影効果遷延,後血管相では欠損像と報告されている2).門脈優位相での造影効果遷延について門脈からの栄養枝の関与が示唆される報告も認め3),自験例でも腫瘍内部に門脈枝や豊富な線維性間質を認めており線維性間質による影響または門脈枝からの血流が造影効果遷延に影響した可能性も考えられた.
【参考文献】
1)海津 貴史 他.長期経過観察の後に診断された細胆管細胞癌の1切除例.日消外誌.2015;48(3):224-233 2)寺岡 雄吏 他.細胆管癌細胞癌における造影超音波検査所見の検討. 肝臓. 2017; 58 654- 663  3)市原 真 他. 連続切片作成における仮想再構築を用いた肝臓細胆管細胞癌の血管走行の検討. 超音波検査技術.2015;40:44-51