Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓/その他/症例

(S666)

肝腫瘤性病変におけるEOB造影MRI息止め不良例での造影超音波検査の有用性

Utility of contrast-enhanced ultrasound for diagnosing liver tumor inpatients who could not hold their breath on EOB-MRI

橋ノ口 信一, 片岡 咲, 石川 照芳, 市川 宏紀, 丹羽 文彦, 竹島 賢治, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 多田 俊史, 金森 明

Shinichi HASHINOKUCHI, Saki KATAOKA, Teruyoshi ISHIKAWA, Hironori ICHIKAWA, Fumihiko NIWA, Kenji TAKESHIMA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Toshifumi TADA, Akira KANAMORI

1大垣市民病院診療検査科, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Reserch, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
肝腫瘤性病変の鑑別診断にソナゾイドを用いた造影超音波検査(以下CEUS)とGd-EOB-DTPA造影MRI(以下EOB-MRI)の有用性は多く報告されている.しかし,EOB-MRIでは造影剤投与後の息止め不良が多くみられるという報告がある.当院でも,ダイナミック撮影時の息止め不良によるモーションアーチファクトが造影剤の早期動態を観察する際に障害となり,診断の妨げになる場合が散見される.そこで,CEUSの息止め不良例における有用性について検討したので報告する.
【対象および方法】
2015年12月から2017年11月までの2年間に当院で総合画像診断により多血性肝細胞癌と診断され,かつCEUSとEOB-MRIを同時期(1ヶ月以内)に同一機種で施行した281例(男性208例,女性73例)を対象とした.平均年齢は71歳(40-90歳),平均腫瘍径19mm(5~175mm)であった.US装置はGE社製LOGIQ E9 with XDclearを使用し,造影剤はソナゾイド®0.0075ml/kgをボーラス投与し,血管相と後血管相を撮像した.MRI装置はGE社製Discovery MR750W 3.0Tを使用し,EOB・プリモビストは0.1ml/kgを1.0ml/秒で,後押し用の生理食塩水は20mlを1.0ml/秒でボーラス投与し,ダイナミック撮像した.検討項目は1. EOB-MRI動脈優位相の息止め不良例の割合,2. EOB-MRI動脈優位相の息止め不良例におけるCEUSの質的診断能について評価した.なお,CEUSの画像所見は日本超音波医学会の「肝腫瘤の超音波診断基準」に準じ評価した.
【結果】
1.EOB-MRI動脈優位相の息止め不良例を4.3%(12/281)認めた.息止め不良例(男性10例,女性2例)の平均年齢は80歳(69-87歳),平均腫瘍径16mm(6~38mm)であった.2. CEUSは息止め不良12例すべて質的診断が可能であった.また,EOB-MRIで評価可能,CEUSで評価困難だった例を3.6%(10/281)認めたが,USでは病変すべてが描出困難な位置に存在した.
【考察】
今回の検討では,息止め不良例は高齢者で多くみられ,要因として長時間の息止めが困難,意思疎通がとりにくい,難聴が挙げられた.我が国でも高齢化社会を迎え,高齢者の医療需要はますます増加している.息止め不良な高齢者の肝腫瘤性病変の鑑別に対してCEUSを施行する機会はこれからも増加すると思われる.ベッドサイドで施行でき,時間分解能および空間分解能が高く,リアルタイム性に優れるCEUSは動脈血流評価が可能で,息止め不良な高齢者においても高い診断能を有することが再確認され,EOB-MRI動脈優位相で血流評価が困難な場合でも積極的に施行されるべきと思われた.一方,CEUSでは解剖学的な要因で描出困難な症例も存在するため,EOB-MRIと相補的な診断が重要と考えられた.
【結語】
CEUSは息止め不良例の肝腫瘤性病変の鑑別診断に有用な検査法と考えられた.