Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍/症例

(S665)

肝血管腫内部の移動点状エコーの成り立ちを考える上で示唆に富む2例

Hepatic hemangioma with small moving spots:report of two cases

本間 明子, 山口 梨沙, 関 春菜, 藤沢 一哉, 長沼 裕子, 石田 秀明

Akiko HONMA, Risa YAMAGUCHI, Haruna SEKI, Kazuya FUJISAWA, Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA

1上尾中央医科グループ津田沼中央総合病院検査科, 2市立横手病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター

1Tsudanuma Central General Hospital, Department of Clinical Laboratory, 2Yokote Municipal Hospital, Department of Gastroenterology, 3Akita Red Cross Hospital, Depart of Diagnostic Ultrasound

キーワード :

【はじめに】
肝血管腫内(特に低エコー領域内部)の移動する点状エコーがみられる現象は,イトミミズサイン等,多くの名称で,以前より知られている.しかし,その現象の出現機序に関しては未だ確定的なものがない.我々は,最近この成り立ちを考える上で示唆に富む2例を経験したので,若干の考察を加え報告する.
略語:Superb microvascular imaging(SMI),Contrast-enhanced ultrasonography(CEUS)
使用診断装置:東芝社製Aplio500 (中心周波数:3-4MHz)で,超音波造影剤はSonazoid (第一三共社)を用い通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例】
症例1:30歳代男性.ドック超音波検査で偶然発見された多発肝腫瘤の精査目的に当院受診.超音波上,a)腫瘤は10~40 mm 大の病変でその中の1個(40mm)に関し,その低エコー領域内部に移動する点状エコーがみられ,b)その現象はM-mode(視野角を狭める)high frameB-modeで明瞭に観察可能であった.c)SMIでは低エコー領域周囲の脈管の拍動に合わせ,そこから低エコー領域内にはき出すようにリズミカルに噴出する血流が,d)そして,わずかに遅れて低エコー内部の点状エコーが舞う様子が観察された.e)CEUSではc)~d)の流れが造影剤の移動の形で証明された.
症例2:40歳代男性.軽度の肝機能異常の精査目的に当院受診.超音波上,まだら脂肪肝の所見に加え,S4に26×25mmに低エコー腫瘤あり.基本的には症例1とほぼ同様の所見が得られた.つまり腫瘤の低エコー領域内部に移動する点状エコーがみられ,その現象はSMIとCEUSでは低エコー領域周囲の脈管の拍動に合わせ,そこから低エコー領域内にはき出すようにリズミカルに噴出する血流と,その直後に低エコー内部の点状エコーが舞う,というパターンが確認された.
【まとめと考察】
肝血管腫内(特に低エコー領域内部)の移動する点状エコーの出現機序としては,a)血流に合わせ病変内部の隔壁が微動する説,b)拡張した類洞内の血球が超音波のエネルギーで移動する散乱体となる説,などが挙げられてきた.しかし,今回の2例では,c)拡張した類洞に周囲から拍動流が流れ混み,それが類洞内部の血液を攪拌させる様な現象がみられた.この拍動流による類洞内血液攪拌運動も,肝血管腫内(特に低エコー領域内部)の移動する点状エコーの出現機序として考慮すべきと考えられた.