小林 奈津子, 飯島 尋子, 多田 俊史, 青木 智子, 西村 貴士, 會澤 信弘, 池田 直人, 榎本 平之, 熊田 卓, 西口 修平

Natsuko KOBAYASHI, Hiroko IIJIMA, Toshifumi TADA, Tomoko AOKI, Takashi NISHIMURA, Nobuhiro AIZAWA, Naoto IKEDA, Hirayuki ENOMOTO, Takashi KUMADA, Syuhei NISHIGUCHI

¹兵庫医科大学病院超音波センター, ²兵庫医科大学病院肝胆膵内科, ³大垣市民病院消化器内科, ⁴健和会病院消化器内科

¹Ultrasound Imaging Center, Hyogo College Of Medicine, ²Division of Hepatobiliary and Pancreatic Medicine, Hyogo College Of Medicine, ³Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, ⁴Gastroenterology and Hepatology, Kenwakai Hospital

キーワード :

【目的】
脂肪肝を定量的に診断する方法として，超音波Bモード法を参照しながら任意の部位で肝脂肪化を定量評価できるAttenuation Imaging（ATI: Aplio TM i800，東芝メディカル）が開発され, 注目を集めている. 今回われわれはATIの有用性を肝脾CT値比（liver to spleen ratio: L/S比）と対比して検討した．
【方法】
対象は当院で2016年9月から2017年5月の間に慢性肝疾患の精査目的でATIが測定された196例中，ATI施行前後6ヶ月以内にCTを施行された135例である．性別（男性/女性）：70/65例，年齢：62（50－71）歳，BMI：24.8（22.4－27.9）kg/m2であった．背景肝（B型/C型/非B非C）は13/29/93例であった．これらの患者のATI値とL/S比との相関およびATIの各脂肪沈着の程度に対する診断能の検討を行った．ATIは右肋間より施行し5回の平均値をATI値として使用した. L/S比はそれぞれ肝臓・脾臓の実質3部位にROI（2cm）をおきCT値を測定しその平均値を用いて算出した. またL/S比のカットオフ値は既報（Iwasaki M, et al.: Transplantation, 2004）にしたがい, 脂肪沈着の程度≧30％，≧30～60％，≧60％をそれぞれL/S比1.12未満，1.01未満，0.9未満とした．連続変数は中央値（四分位範囲）で表した．
【成績】
（1）ATI値は0.70（0.62－0.83）dB/cm/MHzであった．L/S比は1.22（1.03-1.35）であった.（2）ATIとL/S比の相関係数は.0.606（p＜0.001）と相関が認められた．（3）脂肪沈着の程度に対するROC解析によるATIの診断能（AUROC）は，≧30％の場合，0.855（95％CI：0.787－0.922）（カットオフ0.72の時，感度86.0％，特異度70.7％），≧30～60％の場合0.836（95％CI: 0.758－0.915）（カットオフ0.81の時，感度71.0％，特異度83.7％），≧60％の場合0.879（95％CI：0.811－0.946）（カットオフ0.81の時，感度84.2％，特異度80.2％）で，いずれも比較的高い診断能が認められた．
【結語】
超音波Bモード法を参照しながら任意の部位で肝脂肪化を定量評価できるAttenuation Imagingを用いた ATI値はCT値から得られたL/S比と比較的良好な相関が認められるとともに, 各脂肪沈着の程度においても比較的高い診断能が認められた. 脂肪肝を非侵襲的かつ簡便に, 定量的に評価できる本法は, 脂肪肝診療において今後重要な位置を占める可能性が示唆された．