Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓/胆道

(S654)

膵神経内分泌腫瘍55切除例の超音波所見と臨床病理学的検討

Study of ultrasonographic and clinicopathological findings in pNET

小山 里香子, 浦崎 裕二, 田村 哲男, 河野 優子, 今村 綱男, 樋口 真希, 井上 淑子, 橋本 雅司, 竹内 和男

Rikako KOYAMA, Yuji URASAKI, Tetsuo TAMURA, Yuko KAWANO, Tsunao IMAMURA, Maki HIGUCHI, Yoshiko INOUE, Masaji HASHIMOTO, Kazuo TAKEUCHI

1虎の門病院消化器内科, 2虎の門病院臨床生理検査部, 3虎の門病院消化器外科, 4赤坂虎の門クリニック消化器内科

1Gastroenterology, Toranomon Hospital, 2Clinical Phisiological Laboratory, Toranomon Hospital, 3Digestive Surgery, Toranomon Hospital, 4Gastroenterology, Akasaka Toranomon Clinic

キーワード :

【はじめに】
膵神経内分泌腫瘍(pNET)は膵腫瘍の1~2%と比較的稀な腫瘍であるが,近年の画像診断の進歩により無症候性に発見される頻度が増加している.pNETの典型的な超音波所見は境界明瞭・整,内部は均一低エコーで血流が豊富な傾向がある.また,嚢胞変性や石灰化を認める症例があることも特徴の一つである.今回我々は,当院における過去10年間のpNET切除例について超音波所見ならびに臨床病理組織学的検討を行った.
【対象】
2008年~2017年11月までに当院で外科的切除が施行され,病理組織学的にpNETと診断された55例.男性32例,女性23例,平均年齢55.9歳(30~79歳).
【病理組織学的検討】
平均腫瘍径は24.3mm(1.5~90mm).2010年WHO分類でのgradeはG1:29例,G2:19例,NEC:5例,grade不明:2例.腫瘍数は単発:45例,多発:10例.腫瘍部位はPu:2例,Ph:13例,Pb:18例,Pbt:7例,Pt:14例,全体に多発:1例.症状の有無にかかわらず免疫染色で染色された症例はglucagon:19例,insulin:17例,somatostatin:11例,gastrin:3例.
【臨床所見の検討】
有症状は16例で,このうちホルモン過剰症状を呈したのは低血糖症状の7例,すべて機能性insulinomaであった.無症状は39例で,主な発見契機は健診USが16例と最も多く,他疾患の定期follow・精査:10例(US:5例,CT:3例,PET:2例),MEN1の定期follow・精査:7例(CT:6例,MRI:1例)であった.機能性腫瘍の平均腫瘍径が16.4mm(9~27mm,n=7)に対し,非機能性は25.4mm(1.5~90mm,n=48)と機能性は腫瘍径が小さく見つかる傾向にあった.なお,背景疾患としてMEN1:9例,von Hippel-Lindau病:1例が含まれていた.
【超音波所見の検討】
USは54/55例,EUSは33/55例で施行.腫瘤描出可能率はUS:88.9%(48/54例),EUS:100%(33/33例).USで描出できなかった6例のうち2例はEUSでは描出可能であった.USのBモード所見として境界(明瞭/不明瞭),輪郭(整/不整),エコー輝度(低/等/高),内部エコー性状(均一/不均一),尾側膵管拡張(無/有),辺縁低エコー帯(無/有),嚢胞性変化(無/有),石灰化(無/有),血流シグナル(無/有)と腫瘍径の関係を検討すると,輪郭(整/不整:21/27例,平均腫瘍径17.8/28.8mm),嚢胞性変化(無/有:42/6例,平均腫瘍径22.1/37.2mm),石灰化(無/有:40/8例,平均腫瘍径21/38.8mm)で有意差を認めた.輪郭不整・嚢胞変性・石灰化が見られる症例は腫瘍径が大きい傾向にあった.US,EUSともにカラードプラまたはパワードプラで血流評価を施行した症例は15例.USで血流シグナル(+)は7例ですべてEUSでも血流シグナルを検出した.一方,USで血流シグナル(-)は8例で,EUSでも血流シグナル(-)は2例(1例は腫瘤のほぼ全体が石灰化,もう1例はCECT後期相でごく淡く染影される程度の血流)であった.USでは(-)だったがEUSでは(+)と両所見に不一致を認めたものは6例であったが,すべてCECTでは動脈相でhypervascularとなっておりEUS所見と合致し,USよりEUSの方が正しく血流シグナルを捉えられていた.
【まとめ】
機能性腫瘍は非機能性腫瘍と比較し,腫瘍径が小さい傾向にあり,既知の報告と合致した.嚢胞変性や石灰化は腫瘍の緩徐な発育のために起こるとされるが,嚢胞変性や石灰化が見られた症例は腫瘍径が大きい傾向にありこれを裏付ける結果となった.USよりEUSの方が腫瘤内部の血流シグナルを検出する感度が高い結果であった.今後は造影USも含めた検討も必要と考える.今回多発例が10例あり,うち6例はMEN1,1例はvon Hippel-Lindau病とすでに診断されていたが,特に基礎疾患が診断されていない多発症例が3例ありMENの可能性も念頭におき注意深く経過観察していきたい.