坂田 好美, 井坂 葵, 伊藤 準之助, 佐藤 徹, 松下 健一, 吉野 秀朗

Konomi SAKATA, Aoi ISAKA, Junnosuke ITO, Toru SATOH, Kenichi MATSUSHITA, Hideaki YOSHINO

杏林大学医学部循環器内科

Division of Cardiology, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【目的】
近年，3次元心エコーの機能が改善され，image qualityおよびframe rateの上昇，image angleの拡大が可能となり，三次元スペックルトラッキング心エコー（3D-STE）による心機能的評価も可能となっている．今回，同一心拍の左室，右室，左房，右房の四腔を取り込み3D-STEを解析できるQuad Chamber Tracking（QCT）を用いて同一心拍の四腔の機能を評価可能か検討した．
【対象と方法】
対象は，正常健常人30例（平均年齢: 34.1±8.2歳）である．心尖部より左室（LV），右室（RV），左房（LA），右房（RA）の四腔全部が描出される同一心拍の三次元画像を記録した．左室，右室，左房，右房のQCTを用いた3D-STE解析により，3DストレインとしてそれぞれのArea Change Ratio（ACR）を求めた．3D LV-ACRは左室専用の3D-STE解析ソフト，D RV-ACRは右室専用の3D-STE解析ソフトを用いて解析した．また，3D画像より左室駆出率（3D-LVEF），右室駆出率（3D-RVEF）も計測した．
【結果】
左室全体のArea Change Ratio（3D-Global LV-ACR）は-43.8％（-41％ - -46％）で3D-LVEFは58.1％（56.1％ - 61.9％）であった．右室全体のArea Change Ratio（3D-Global RV-ACR）は-25.8％（-23.8％ - -27.6％）で3D-RVEFは44.0％（40.6％ - 51.4％）であった．左房全体のArea Change Ratio（3D-Global LA-ACR）は58.0％（46.7％ - 77.6％）で，右房全体のArea Change Ratio（3D-Global RA-ACR）は61.3％（50.4％ - 81.9％）であった．3D-Global LV-ACRは3D-LVEFと有意な相関を認め（r=-0.8762, P＜0.001），3D-Global RV-ACRは3D-RVEFと有意な相関を認めた（r=-0.6874, P＜0.001）．
【結論】
image quality，frame rate，image angleなどの問題により現在まで困難であった同一心拍の四腔全体の心機能評価が，QCT を用いた3D-STEにより可能となり，QCTを用いた3D-STE解析 により同一心拍の3D-Global LV-ACR，3D-Global RV-ACR，3D-Global LA-ACR，3D-Global RA-ACRの測定が可能であった．