Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
腫瘍 その他 1

(S625)

弁腫瘤の二症例:大動脈弁腫瘤および僧帽弁腫瘤

Two cases of aortic valve and mitral valve tumors: What is the difference between the two tumors?

木田 朱美, 浅田 俊樹, 吉田 太治, 岩城 卓, 野末 剛, 道下 一朗

Akemi KIDA, Toshiki ASADA, Taiji YOSHIDA, Taku IWAKI, Tsuyoshi NOZUE, Ichiro MICHISHITA

国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院循環器内科

Cardiovascular Department, Yokohama Sakae Kyosai Hospital

キーワード :

【症例1】
63歳,女性.胸苦の精査目的に近医より紹介受診された.マスター負荷心電図陽性にて,冠動脈CTが施行された.冠動脈CTで,冠動脈は正常であったが,大動脈弁下に約4mmの低吸収域の結節付着を認めた.経胸壁心臓超音波検査では,大動脈弁下左室側に約3mm大の腫瘤付着を認めたが,描出は不良であった.経食道心臓超音波検査では,大動脈弁左冠尖に付着する約6×5mmの辺縁不明瞭な球状腫瘤を認め,血流により振動を認め,乳頭状線維弾性腫疑いと診断した.塞栓症予防のため抗凝固療法を開始したが,腫瘤サイズの変化なく,腫瘤の可動性を認めることから,大動脈弁腫瘤摘出術を施行した.病理組織診断にて乳頭状線維弾性腫と診断された.
【症例2】
54歳,女性.2004年より糖尿病加療開始,2014年より糖尿病性腎症にて腹膜透析導入となった.2017年定期検査の経胸壁心臓超音波検査にて,僧帽弁前尖の左房側に付着する腫瘤を認め,精査目的に当科を受診された.経食道心臓超音波検査にて僧帽弁輪の石灰化に加え,僧帽弁前尖(A3)に可動性に富んだ辺縁は高輝度で,内部は低エコー9×5mmの球状腫瘤,後尖lateral側の弁輪部にも3×2mmの可動性高輝度腫瘤,上行大動脈にも可動性に富む約10mmの紐状構造物を認めた.1年前の経胸壁心臓超音波検査にて腫瘤形成はみられなかった.CTにて僧帽弁輪部の著明な石灰化,石灰化病変による高吸収結節影を認めた.腫瘤による塞栓症の発症は認めなかったが,可動性が大きくリスクが高いと判断し,手術方針とした.術前のCAG検査にてLMT: 50%,#6:75%(FFR=0.66)であり,僧帽弁・大動脈弁腫瘤摘出術およびCABG(LITA-LAD)を施行した.病理・手術所見では,感染性心内膜炎を支持する所見はなく,calcified amorphous tumor(CAT)と診断した.しかし,術後経過にて再度僧帽弁腫瘤の再発がみられたが,腫瘤サイズは小さく保存的に加療を行っている.
【考察】
二症例ともに,偶発的に発見された心臓の弁に付着する腫瘤であった.症例1は,経食道心臓超音波検査(2D, 3D),CTが診断に有用であり,術前に乳頭状線維弾性腫疑いと診断を行った.症例2は,CATは慢性透析患者,高齢女性に合併する頻度が高いと報告されており,患者背景や臨床的特徴および画像所見より,術前より臨床的にCATと診断することが可能であった.二症例ともに報告は稀であり,文献的考察を加えて報告する.