桐ヶ谷 仁, 岩橋 徳明, 松澤 泰志, 岡田 興造, 小西 正昭, 前島 信彦, 小菅 雅美, 日比 潔, 木村 一雄, 田村 功一

Jin KIRIGAYA, Noriaki IWAHASHI, Yasushi MATSUZAWA, Kouzou OKADA, Masaaki KONISHI, Nobuhiko MAEJIMA, Masami KOSUGE, Kiyoshi HIBI, Kazuo KIMURA, Kouichi TAMURA

¹横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター, ²横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学教室

¹Yokohama City University Medical Center, Cardiology, ²Yokohama City University Graduate School of Medicine, Department of Medical Science and Cardiorenal Medicine

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症例は84歳女性．主訴は呼吸困難感．高血圧症，脂質異常症で近医へ通院していた．2011年に心雑音の精査で施行した心エコー図検査で軽度大動脈弁の指摘を受けた．その後定期的に心エコー図検査を施行していたが，徐々に狭窄が進行した．2016年に施行した心エコー図検査では弁口面積（trace）0.6cm2，弁口面積（連続の式）0.47cm2，平均圧較差 58.2mmHg，最大圧較差95.4mmHgと高度狭窄所見を認めた．このころより階段や坂道で労作時の胸部圧迫感を認めており，有症候性の重症大動脈弁狭窄症と診断した．経カテーテル大動脈弁留置術（TAVI）の適応と判断され，当院紹介受診した．冠動脈造影等の術前検査では異常所見は認めず，2016年某日にSapien3 20mmを用いてTAVIを施行した．術後経過良好で独歩で退院した．3カ月後の心エコーでは平均圧較差17.6mmHg，最大圧較差31.7mmHgと術前と比較し圧較差の低下を認めていた．しかし12カ月後の心エコー図検査では平均圧較差22.7mmHg，最大圧較差42.1mmHgと圧較差の上昇を認めた．心エコー図検査上は大動脈弁の明らかな異常は認めなかったが，造影CT検査を施行したところ大動脈弁直下に血栓付着を認めた．外来でワーファリンを導入し塞栓症状は認めず経過した．TAVI施行後慢性期に経胸壁心エコー図検査での大動脈弁圧較差の上昇を契機に診断された大動脈弁狭窄症の一例を経験した．TAVI後の血栓弁に関する報告はまだ少なく，文献的考察を加え報告する．