Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
心房

(S621)

抗凝固薬の種類・投与期間と左心耳血栓有病率の関係並びに血栓有病の予測因子の検討

Relationship between type and administration period of anticoagulant and prevalence of left atrial thrombus in patients with atrial tachyarrhythmias

宮﨑 亮一, 宮本 貴庸, 野里 寿史, 永田 恭敏, 山口 徹雄, 原 信博, 三輪 尚之, 増田 怜, 佐川 雄一朗, 渡辺 敬太

Ryoichi MIYAZAKI, Takamichi MIYAMOTO, Toshihiro NOZATO, Yasutoshi NAGATA, Tetsuo YAMAGUCHI, Nobuhiro HARA, Naoyuki MIWA, Ryo MASUDA, Yuichiro SAGAWA, Keita WATANABE

武蔵野赤十字病院循環器科

Cardiology, Japanese Red Cross Musashino Hospital

キーワード :

背景:心房細動治療ガイドラインにおいて,心房細動患者に除細動を施行する場合は,除細動前に3週間以上のワルファリンまたはダビガトランの投与,または経食道心臓エコー(TEE)による左心耳(LAA)血栓の有無の確認が推奨されているが,特に直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)に関しては血栓抑制や適正な抗凝固期間についての報告はない.目的:TEEを用いて,抗凝固薬投与心房細動患者のLAA血栓有病率と背景因子,投与期間による違いを検討すること.方法:2012年1月から2017年12月の期間中に抗凝固薬投与下でLAA血栓除外目的にTEEを施行した非弁膜症性心房頻拍症例の連続1247症例を後ろ向きに解析した.使用した抗凝固薬と治療期間毎にLAA血栓の有無ならびに背景因子の比較検討を行なった.また3週間以上の抗凝固療法にも関わらず血栓を有する症例の背景因子の検討を行なった.結果:1247例中,ワルファリン投与患者521例,DOAC投与患者726例(ダビガトラン176例,リバロキサバン236例,アピキサバン295例,エドキサバン19例)であった.LAA血栓有病例はそれぞれ17例(3.3%)と11例(1.5%)(内訳は5例(2.8%),1例(0.4%),4例(1.4%),1例(5.2%))でP=0.038とワーファリン群で有意に高率であった.ワルファリン群において,血栓有病例と非有病例でのPT-INR値に差はなかった(2.08±0.66 vs 2.02±0.51,P=0.95).ワルファリン群では有意にTEEで計測したLAA血流速度が遅く(0.40±0.22 vs 0.47±0.23,P<0.001),モヤモヤエコーが多く(34% vs 26%, P=0.002),左室収縮能(EF)が低く(63.2±12.5 vs 64.8±11.6, P=0.04),左房径(LAD)が大きかった(40.5±7.0 vs 39.0±7.1, P<0.001)が,CHADS2スコアは両群で差を認めなった(1.33±1.18 vs 1.20±1.12,P=0.14).また抗凝固薬の投与期間はむしろDOAC群の方が有意に短かった(中央値389日 vs 96日,P<0.001).ガイドラインに準じて抗凝固薬投与期間20日未満,21日以上にわけて血栓の有無を解析したところ,ワルファリン投与例では有意に20日未満の群の方が血栓有病率が高く(12% vs 2.8%, P=0.01),DOAC投与例では有意差はないものの20日未満の群が高い傾向であった(3.8% vs 1.3%, P=0.16).21日以上の抗凝固療法にも関わらず血栓を有する症例は1170例中23例(2.0%)であり,血栓有病の予測因子を多変量解析を用いて検討すると,CHADS2スコアはオッズ比2.06(95%信頼区間1.54-2.75,P<0.001),DOACの使用はオッズ比0.68(0.28-1.63,P=0.39),TEE時に心房細動であることはオッズ比6.05(1.39-26.4,P<0.001)でCHADS2スコアと検査時の調律が有意な予測因子であった.結論:ワルファリンはもちろんDOACにおいても除細動前またはアブレーション治療前に3週間以上の投薬を行うことは妥当である.ただしCHADS2スコアが高く,持続性心房細動の症例に関しては抗凝固薬の投与期間に依存せず事前にTEEによる血栓評価が望ましい.