渡部 朋幸, 高野 真澄

Tomoyuki WATANABE, Masumi IWAI-TAKANO

¹医療生協わたり病院内科・循環器内科, ²福島県立医科大学集中治療部

¹Division of Cardiology and Internal Medicine, Health Co-op. Watari Hospital, ²Intensive Care Unit, Fukushima Medical University

キーワード :

【背景】
頸動脈蛇行は心血管危険因子と関連している．内頚動脈（ICA）蛇行が心血管イベントの予測因子となるかに関しては肯定的な報告および否定的な報告がある．一方，頸動脈エコーによる総頚動脈（CCA）の観察はICAの観察に比べ容易である．しかしながら，総頚動脈の蛇行が心血管イベントの予測因子となるかは十分検討されていない．
【目的】
総頚動脈の蛇行が心血管（CV）イベントと関連するかどうか，頸動脈エコーにより検討する．
【対象】
2003年から2004年の2年間に頸動脈エコー（CUS）を施行した患者598人（平均年齢 66.8±11.8歳，男性276人）．基礎疾患（重複あり）は下記の通りである: 高血圧 424人，脂質異常 209人，糖尿病/耐糖能障害 174人，脳梗塞既往 140人，虚血性心疾患 77人．
【方法】
頸動脈エコーにて左右総頚動脈を観察し，長軸像にて観察範囲の近位部より膨隆部までの蛇行の程度によりI群（蛇行なし及び蛇行度30度未満），II群（蛇行度30度以上）に分類した．左右の蛇行程度が異なる場合は，重度の群に分類した．心血管系死亡，非致死性心筋梗塞，脳梗塞，心不全，大血管疾患をCVイベントと定義し，蛇行の程度とCVイベントの関連を追跡した．
【結果】
観察期間1-14年（中央値10年）中，91件のCVイベントが生じた（ 心血管死31，非致死性心筋梗塞14，心不全9，脳梗塞30，大動脈疾患7）．イベントを生じた患者では高血圧，CVイベント既往，CCA蛇行度が有意に高く，CCA蛇行のCVイベントに対する年齢調整ハザード比は3.42（95％CI2.2-5.3）だった．
【結語】
CCA蛇行はCVイベントに対する独立した予測因子であることが示された．