Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
超音波計測システム

(S591)

構音障害患者用舌運動観察ツールの開発

Development of Tongue Motion Observation Tool for Articulation Disorder Patients

向井 信彦, 石津 剛志, 森 紀美江, 武井 良子, 山田 紘子, 長谷川 和子

Nobuhiko MUKAI, Tsuyoshi ISHIZU, Kimie MORI, Yoshiko TAKEI, Hiroko YAMADA, Kazuko HASEGAWA

1東京都市大学大学院工学研究科, 2昭和大学歯科病院口腔リハビリテーション科

1Graduate School of Engineering, Tokyo City University, 2Department of Oral Rehabilitation, Showa University Dental Hospital

キーワード :

【目的】
側音化構音(LA)患者の舌運動は健常者の舌運動と異なり,左右非対称などの特徴を持つ.従って,LA患者の構音訓練には舌運動の可視化が必要だが,口腔内の舌の動きは直視しにくい.そこで,超音波診断装置を用いて撮影された画像から健常者を対象とした舌の3次元モデルを構築し,モデルをLA患者の超音波画像に合せて変形することで,舌の運動を3次元的に観察できるツールの開発を目的とする.
【対象と方法】
超音波診断装置用プローブをオトガイ下に設置することで,口腔内にある舌表面を捉える.ただし,口腔内は超音波の減衰を伴うため,画像は多くのノイズを含む.そこで,ノイズ除去や2値化などの画像処理手法を適用して舌表面の形状を捉える特徴点を抽出し,舌表面は滑らかであるという仮定に基づいて舌表面の特徴点をスプライン近似する.撮影された複数の前額断面画像に対して舌表面をスプライン近似し,複数のスプライン近似曲線から舌表面のスプライン近似曲面を得る.健常者の舌超音波画像は比較的明瞭であるため,健常者の舌の3次元モデルを構築して舌基準モデルとする.一方,LA患者の超音波画像は不鮮明な部分が多く,舌表面が抽出できない場合は,舌基準モデルを参考に舌の3次元モデルを構築する.さらに,構築された舌の3次元モデルを時系列的に変形することで,LA患者の舌運動を3次元的に観察することができる.なお,本ツールは最初に矢状断面画像上で舌領域を手動で指定するだけで,矢状断面と前額断面との対応を取り,自動的に舌の3次元モデルを構築できる.また,医師による舌表面の確認や特徴点の修正も行える機能を有する.
【結果と考察】
本手法を用いることでLA患者の舌運動を3次元的に観察することが可能となり,また,健常者との舌運動の違いも比較観察できるようになった.舌の3次元モデル構築はほぼ自動化されているため,舌運動の可視化までの時間が大幅に短縮された.さらに,構築された舌モデルの精度を確認し,医師が超音波画像上で取得された特徴点の位置を修正できる機能も有するため,不自然な舌の動きを観察した場合の対応も可能である.
【結論】
本手法を用いることにより短時間で舌の3次元モデルを構築でき,さらに,LA患者の舌の動きを健常者の舌の動きと比較して観察することが可能となった.今後は,多くのLA患者のデータに本手法を適用してツールの有効性を検証する.