Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
イメージング・信号処理

(S587)

固有値展開・特異値分解による受信焦点からのエコー強度の推定

Estimation of intensity of echo from receiving focal point using eigenvalue or singular value decomposition

長谷川 英之

Hideyuki HASEGAWA

富山大学大学院理工学研究部

Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama

キーワード :

1. 目的
ビームフォーミングは,超音波断層像の空間分解能やコントラストなどを決定する重要な処理の1つである.現在,主に用いられている手法は遅延和ビームフォーミングであり,焦点位置と超音波振動子との距離情報に基づき受信信号を遅延させた後,加算平均により焦点位置からのエコー信号を推定している.本報告では,固有値展開もしくは特異値分解により焦点位置からのエコー信号強度を推定する手法について検討を行った.
2. 原理
本報告では,受信ビームフォーミング時には,遅延和ビームフォーミングの原理に基づき,各素子からの受信信号に遅延を与えた.その後,従来法としては加算平均により受信焦点からのエコー強度の推定を行った.固有値展開によるエコー強度推定においては,遅延付与後のある時刻における素子信号の1次元ベクトルの分散共分散行列の第1固有値からエコー強度の推定を行った.また,特異値分解によるエコー強度推定においては,やはり遅延付与後の素子信号について,素子-受信時刻の2次元エコー信号行列を作成し,その行列に特異値分解フィルタ[1]を用いて第1特異値成分を抽出することで焦点からのエコー強度を推定した.固有値展開を用いた手法と特異値分解を用いた手法の違いは,後者は超音波信号の時間方向の情報を含むことである.
3. 実験結果
超音波画像評価用ファントム(CIRS, model 040GSE)を用いて実験を行った.図(a),(b),(c)はそれぞれ,従来の遅延和ビームフォーミング,固有値展開を用いた手法,特異値分解を用いた手法により得られた嚢胞部のBモード断層像である.従来法(a)に比べ,固有値展開を用いた手法(b)ではコントラストが向上するとともに,スペックルの低減効果が見られた.特異値分解を用いた手法(c)も同様にスペックル低減効果は見られたがコントラストは低下した.別途ストリング部を測定した結果からは,方位分解能については従来法が優れていることが示された.
4. まとめ
本報告では,固有値展開および特異値分解を用いたビームフォーミングについて検討を行った.提案法によりコントラスト向上およびスペックル低減効果が見られた.
参考文献
[1]C. Demené, et al., IEEE Trans. Med. Imaging, vol. 34, no. 11, pp. 2271-2285, 2015.