Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
生体作用

(S574)

培養心筋細胞の機械刺受容感度と細胞骨格の発達との関連-アクチン重合阻害剤の利用-

Relationship between mechanosensitivity and cytoskeletal development of cultured cardiac myocytes: Use of actin polymerization inhibitor

根岸 聖太, 工藤 信樹

Shota NEGISHI, Nobuki KUDO

北海道大学大学院情報科学研究科

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【背景・目的】
我々は超音波診断装置の安全性検討の一環として,超音波照射による培養心筋細胞の拍動異常の誘導について検討してきた.さらに,硬さが異なる足場上に培養した心筋細胞では,期外収縮が誘発される超音波の波数閾値が異なることを示してきた.この原因は,足場層の硬さに依存して細胞骨格の発達程度が変化したためと考えられる.そこで本研究では,アクチン重合阻害剤により細胞骨格の発達程度を制御し,期外収縮発生閾値との関連を調べた.
【方法】
実験には生後2~3日のラット新生仔から単離培養した心筋細胞を用いた.細胞骨格の発達度合いを変化させるため,アクチン重合阻害剤(Latrunculin A)を培養段階で加えた心筋試料を作成した.対照条件として阻害剤を加えず同期間培養した心筋試料も作製した.心筋細胞の機械刺激受容感度を評価するため,音圧と波数が異なる超音波パルスを一回のみ照射し,拍動異常が誘導される閾値を調べた.拍動観察には倒立型光学顕微鏡(Eclipse Ti C2+,Nikon)を用い,拍動異常の判定は目視により行った.心筋細胞の細胞骨格の発達程度を調べるため,心筋試料を固定処理した後,アクチンに特異的に結合する蛍光標識ファロイジン(Acti-stain 488 phalloidin, Cytoskeleton)で染色し,共焦点顕微鏡観察を行った.
【結果・考察】
アクチン重合阻害剤を加えない試料と加えた試料の蛍光像を図1に示す.心筋細胞を実線で囲んであり,繊維状の構造がアクチン繊維を表わす.アクチン繊維の伸展範囲は阻害剤を加えないサンプルで明らかに大きく,阻害剤を加えたサンプルでは発達が抑制されていることが確認できる.パルス波の音圧を13.5MPap-pに固定した場合,阻害剤添加試料と非添加試料に拍動異常が誘発される波数はそれぞれ,71±39.3,6±0.4(n=6,平均±標準誤差)であった.有意差は見られなかったものの(p=0.22),阻害剤を添加したサンプルは拍動異常が生じにくい傾向にあることが示された.
【結論】
機械刺激受容感度は細胞骨格の発達度合いに依存する可能性が示されたが,サンプル間のばらつきが多く有意差は得られなかった.今後,ばらつきの少ない実験方法をさらに検討する.