Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
マイクロバブル・キャビテーション 1

(S567)

超音波照射による気泡と細胞の相互作用観察のための血管ファントムの開発

Development of a vascular phantom for observation of bubble-cell interaction under ultrasound exposure

今井 慎司, 工藤 信樹

Shinji IMAI, Nobuki KUDO

北海道大学大学院情報科学研究科

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【目的】
我々は生体内でのソノポレーションを目指して検討を行っている.これまで生体内を模擬するために,硬いカバーガラスではなく柔軟なゲル上に培養した細胞のソノポレーション現象を観察してきた.しかし,血管内に投与した気泡のほとんどは毛細血管内に存在するため,その内部での気泡と細胞の相互作用を理解する必要がある.そこで今回は,ゲルで作製した微小管腔内に細胞を培養した微小血管ファントムを作成し,共焦点顕微鏡を用いた超音波照射前後の内腔の細胞変化の観察,高速度カメラを用いた超音波照射中の気泡のふるまいの観察を行った結果を示す.
【方法】
血管ファントムは,生体にほぼ等しい硬さを持つアクリルアミドゲル(2.3 kPa)を用いて作成した.直径60 µmのタングステン線を通した型にゲル溶液を満たし,ゲル化後に線を引き抜くことで管腔構造を形成した.内腔をコラーゲンコートした後,細胞懸濁液を内腔に導入し,ファントムを適宜反転しながら培養することで内壁を細胞で埋めた.本来であれば血管内皮細胞を用いるべきだが,今回は培養の容易さからヒト前立腺がん細胞(PC-3)を用いた.その後,内腔に直径3 µm程度の微小気泡(バブルリポソーム)を導入して細胞と付着させ,中心周波数1 MHz,最大負圧1.0 MPa,波数3 波のパルス超音波を2回照射し,共焦点顕微鏡を用いて超音波照射前後の内腔の断層像を撮影した.細胞膜をCellMask Orangeで,気泡のシェルをNBDで染色し,細胞膜の損傷をSYTOX Blueで検出した.また,超音波照射下の気泡のふるまいを高速度カメラ(HPV-X2,島津製作所)を用いて1000万コマ毎秒で256コマ撮影した.
【結果と検討】
共焦点顕微鏡で観察した超音波照射前後の内腔像をFig. 1に示す.管腔表面に細胞(赤)が張り付き,内腔を形成していた.また,(a)照射前の画像では細胞に気泡(緑)が付着している様子が確認できた.超音波照射中の気泡のふるまいを高速度撮影した結果をFig. 2に示す.気泡径が最大と最小になる時相を表示しており,細胞周囲での気泡の膨張・収縮が確認できた.(b)照射後には,数個の細胞の内部にSYTOX Blue(青)の蛍光が認められたことから,管腔内での気泡のふるまいが内腔の細胞に損傷を与え得ることが示された.以上より,血管ファントムを用いた細胞と気泡の観察は,血管内でのソノポレーションの損傷の発生機序を理解するうえで有用と考えられる.本研究の一部は科研費基盤A(17H00864)により行われた.