Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

奨励賞 産婦人科
奨励賞 産婦人科

(S559)

Strain elastographyを用いた子宮内膜ポリープと子宮粘膜下筋腫の鑑別

Differential diagnosis between endometrial polyp and submucosal myoma by strain elastography

森田 政義, 梁 栄治, 長屋 陽平, 瀬戸 理玄, 櫻井 理奈, 生井 重成, 鎌田 英男, 松本 泰弘, 木戸 浩一郎, 比嘉 貴子

Masayoshi MORITA, Eiji RYO, Youhei NAGAYA, Michiharu SETO, Rina SAKURAI, Shigenari NAMAI, Hideo KAMATA, Yasuhiro MATSUMOTO, Koichiro KIDO, Takako HIGA

1帝京大学産婦人科, 2瀬戸病院産婦人科

1Obstetrics and gynecology, Teikyo university, 2Obstetrics and gynecology, Seto hospital

キーワード :

【目的】
子宮内膜ポリープと子宮粘膜下筋腫とは子宮内腔を占拠する腫瘤として頻度が高いが,両者の術前鑑別診断はBモード超音波検査のみでは困難なことがあり,症例によっては子宮鏡検査やMRIが必要になる.一方,strain elastographyは組織の硬さを評価する検査法である.子宮内膜ポリープは子宮内膜から発生し,子宮粘膜下筋腫は子宮筋層から発生するため,両者の組織硬度は異なると考えられる.Strain elastographyで両者の鑑別が可能であれば,外来で非侵襲かつ簡便に手術の適応を判断できる.我々はstrain elastographyを用いて両者を鑑別できるかどうかを検討した.
【対象と方法】
2016年から2017年に当院で子宮鏡下経頸管的腫瘍切除術(TCR)を施行し,説明の後同意の得られた7例を対象とした.手術施行前日に経腟的にstrain elastographyを施行した(図1).2人の検者がそれぞれ独立して子宮内腫瘤の硬さを子宮筋層より硬い,同程度,軟らかいの3群に分類した.子宮筋層と同程度あるいは硬い場合を子宮筋腫,軟らかい場合を子宮内膜ポリープとした場合に,どの程度診断精度があるかを摘出検体の病理診断をもとに比較検討した.また検者間で判定にどの程度違いがあるかを検討した.
【結果と考察】
病理診断は7例中4例が子宮内膜ポリープ,2例が子宮筋腫であった.1例は子宮内膜ポリープと子宮筋腫を合併していた.子宮内膜ポリープの症例は全例子宮筋層より軟らかく,子宮筋腫の症例は1例が硬く,1例は筋層と同程度であった.子宮内膜ポリープと子宮筋腫の合併した症例は軟らかかった.全ての症例において検者間の判定は一致した.子宮内膜ポリープと子宮筋腫は症状が強い場合は手術の適応となるが,子宮内膜ポリープと判断してもAPAMなどの可能性があるため,病理検索の必要性がより高い.また,手術方法として子宮内膜ポリープであればTCRが可能であるが,子宮筋腫の場合は可能かどうかについてMRIが必要となる.Strain elastographyは定性的な検査であるため,子宮筋層の硬さを基準とすることで両者の鑑別は可能と考えられる.今回の結果はそれを示唆し,外来で非侵襲的かつ簡便に鑑別診断できる有望な検査と思われる.
【結論】
Strain elastographyは子宮粘膜下筋腫と子宮内膜ポリープとを鑑別できる有望な検査である可能性が示唆された.