英文誌(2004-)
共同企画
日本超音波検査学会との共同企画 泌尿器科専門医が検査士に求めるもの・検査士が提供できるもの
(S549)
腎臓の腫瘤性疾患 ―腎オンコサイトーマ―
A Case of Renal Oncocytoma
米山 昌司, 南里 和秀
Masashi YONEYAMA, Kazuhide NANRI
静岡県立静岡がんセンター生理検査科
Division of clinical Physiology, Shizuoka Cancer Center Hospital
キーワード :
【はじめに】
腎腫瘤の中で臨床的に最も重要な疾患は腎細胞癌である.しかし腎腫瘤には腎細胞癌と鑑別が困難なことも経験する.今回は腎細胞癌との鑑別に苦慮した腎腫瘤症例を呈示し臨床医への報告について考える.
【症例】
70才代男性,既往歴:胆石症,家族歴:特記事項なし.上腹部痛を契機に前医受診,USとCTにて偶発的に右腎腫瘤を指摘された.
検査目的:腎腫瘤の精査
ラボデータ:BUN:16.2 CRE:0.80 CRP:0.16 Na:137 K:4.5 Cl:102 PSA:1.490 尿蛋白:(-) 糖:(-) 潜血:(-) 比重:1.016 尿沈渣:赤血球1> 白血球1> 扁平上皮1> 腎尿細管上皮1>
経過・画像所見:初診時US所見:右腎中央に14×13mmの充実性腫瘤を認めた.形状やや不整,境界不明瞭,内部は周囲より高エコーであるが一部低エコーがみられ不均一,カラードプラでは内部に血流シグナルを認め定常波を確認した.腎の大きさ,腎盂の拡張,皮質エコー輝度に特記所見なし.初診時CT:右腎皮質に10mm大の早期相で不均一な濃染,遅延相でwashoutを示す結節であった.明らかな脂肪は認めない.待機的手術となり術前に再度USを実施した.術前USでは内部に拍動性血流を認め,他の所見に著変はなかった.
病理所見:病理肉眼所見では腫瘍の境界は明瞭で内部に微小出血を伴っていた.組織所見では腫瘍は境界明瞭であるが明かな被膜はなし,腫瘍細胞は均一な胞巣状構造を呈し中心部にわずかに硝子化した間質を伴っていた.オンコサイトーマと診断された.
【まとめ】
腎腫瘍の鑑別には形状,輪郭・境界,内部性状・輝度,血流の多寡や血管走行に注目する.USは空間分解の優れ多くは診断可能であるが,時に診断に苦慮することがある.オンコサイトーマと嫌色素癌の鑑別はしばしば苦渋することが知られており,本例のような小さな腫瘍の診断と報告には他のモダリティーとの総合的な評価が必要になる.