Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

共同企画
日本超音波検査学会との共同企画 泌尿器科専門医が検査士に求めるもの・検査士が提供できるもの

(S548)

腎臓の良性疾患-急性巣状細菌性腎炎-

Acute focal bacterial nephritis

綿貫 裕

Yutaka WATANUKI

姫路赤十字病院検査技術部

clinical laboratory, himeji red cross hospital

キーワード :

急性巣状細菌性腎炎は,急性細菌性腎炎の1病型で1)膿瘍形成,液状化を伴わない腎実質の炎症が組織学的に証明されること,2)炎症の存在を示唆する症状があり,画像診断により腎に明瞭な腫瘤を認め,治療によりこれらがともに消失することの,いずれかを満たすものである.臨床症状は,全例発熱を認め,腹痛・腰背部痛や食欲不振などの非特異的症状しかなく,3割は尿所見も認めなかった.画像所見の多くは,CTが有用とされているが,超音波検査にカラードップラを併用することで急性巣状細菌性腎炎を指摘でき,被爆もなく特に小児に有用である.
【症例】
2歳
【主訴】
発熱
【現病歴】
39度代の高熱が出現,近医受診し抗生物質を投与されるも再度発熱,熱源精査となり当院小児科入院となる.
【検査依頼】
不明熱精査
【検査結果】
WBC 13200/μL CRP 8.9mg/dl 尿所見 膿尿や蛋白尿認めず.
【画像所見】
超音波所見では,右腎上極に40mm大の比較的境界明瞭な球状の髙エコー域を認めた.カラ-ドプラ-では血流はほとんど認めず急性巣状細菌性腎炎の所見であった.左腎を含め,他の部位は正常血流を認めた.高周波プローブで腎盂の観察をしたが腎盂の肥厚は認めなかった.抗生剤で治療後,半年で消失していた.
【まとめ】
超音波検査は,肥満やガスの影響を受けやすく物理的制限があるが,小児のような皮下脂肪の薄い対象者には,アプローチ方法やプローブの使い分け,カラードプラの流速や感度を調節することにより,詳細な観察でき急性巣状細菌性腎炎の被爆もなく診断,経過観察に適し診療に役立つと思われる.