英文誌(2004-)
共同企画
日本心エコー図学会との共同企画 超音波による心血管機能評価
(S545)
血管機能:HFpEFとの関連
Ultrasound in the assessment of vascular function in heart failure with preserved ejection fraction
土肥 薫
Kaoru DOHI
三重大学医学部附属病院循環器内科
Department of Cardiology, Mie University Hospital
キーワード :
左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者は,心不全患者全体の半数近くにのぼる.加齢や生活習慣病に起因する血管内皮機能低下や動脈硬化がHFpEFの発症・進展に強く関与する.実際,HFpEF患者では,骨格筋や心筋における血管内皮機能障害が認められるとする報告が多い.骨格筋の血管内皮機能評価には,上腕動脈の血流依存性血管拡張反応を測定する方法(FMD)と指尖容積変化で測定する方法(RH-PAT)がある.上腕動脈の駆血解除後における血管径増加率を超音波装置で計測するFMD測定法に較べ,動脈拡張反応を指尖容積脈波として検出するRH-PATは,より微小循環における内皮機能障害を検出する.冠血流予備能(CFR)は経胸壁心臓超音波検査により評価可能である.HFpEF患者では,冠動脈に有意狭窄が存在しなくても,血管内皮障害を反映してCFRが低下し,左室拡張能とも関連する.近年,CFR低下と左室拡張能障害が,HFpEF患者における心血管イベントや心不全入院の重要な予測因子であると報告された.慢性腎臓病は,HFpEFの発症・進展機序として重要な役割を果たす.超音波検査を用いて腎葉間動脈の血流速度波形から算出されるResistive Indexは,尿細管間質病変・腎血管病変とよく相関し,HFpEF患者ではResistive Index高値が予後と関連することがすることが報告されている.当日は,HFpEF におけるFMD,CFR,RI計測の意義について提示したい.