Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

共同企画
日本脳神経超音波学会との共同企画 脳神経超音波最前線

(S542)

神経超音波最前線 末梢神経,頸部神経根の超音波描出法

Visualization method of peripheral nerve and cervical nerve root

高松 直子

Naoko TAKAMATSU

徳島大学病院神経内科

Department of Neurology, Tokushima University Hospital

キーワード :

【はじめに】
今日の医療機器のめざましい進歩にともなって超音波の分野も各方面に広がりつつある.運動器領域,麻酔科領域においては神経内科においても電気生理検査に加えて超音波検査を行うことでより診断精度が向上する可能性が示唆されている. 主に,手根管症候群,肘部管症候群をはじめとする絞扼性末梢神経障害や脱髄性,軸索性,炎症性末梢神経障害,遺伝性末梢神経障害の診断に有用である.
【末梢神経の構造】
中枢神経と身体末梢部を連絡する投射伝導路が末梢神経である. 機能的には運動経,感覚神経,自律神経の3種類からなる. 末梢神経は神経束の中に,運動神経,感覚神(一次感覚ニューロン)といった機能的に異なる神経線維を含み,さらに自律神経を含む部分もある. それらの神経束は神経周膜によって覆われる. 神経束がたくさん集まりその間に血管を含み,神経上膜によって束ねられ1つの神経幹が構成される.
【末梢神経の描出法,計測法】
計測が可能な神経は比較的太く体表面に近い神経であり,上肢では正中神経,尺骨神経,橈骨神経,下肢では脛骨神経,腓腹神経がある. 観察内容は神経の太さ(径,断面積)や浮腫,腫瘍などの有無である. 腫瘍 についてはガングリオンや神経鞘腫などが観察できる. プローブは12~22MHzのリニア型(部位によって変える)を使用し,プリセットはMSKで行うとよい. いずれの神経も末梢側から短軸像で描出プローブを短軸方向に上下にずらしながら連続性のある構造物を探す. 血管と伴走していることが多いのでカラーを入れながら上下して探すとよい. 計測部位は手首,肘,上腕など各施設で設定し,それ以外は特に腫大している部位を計測する. まず短軸像で断面積は,manual traceし計測する. 神経の外側の神経上膜は高輝度に描出されるが,外側からと内側からでは計測値に大きな誤差が生じる.現在のところ上膜の最内側部で計測するのが一般的である.
【頸部神経根の構造】
脊髄神経の根は,脊髄前面の前外側溝から出る前根と,脊髄後面の後外側溝から出る後根の2つである. 前根はおもに骨格筋を支配する運動線維,後根はおもに皮膚などの知覚を伝える感覚線維を入れている. 前根と後根が合流した先で,脊髄神経は細い硬膜枝と交通枝を出したのち,交感神経幹の神経節に入る. 一部の前枝は神経叢を作って異なる高さからの線維を交換し,さまざまな高さからの線維を含んだ神経になって末梢へ向かう. エコーで描出できるのは前根と後根が合流したところから神経叢の間である.
【頸部神経根の描出,計測法】
まず,頸動静脈を描出し,プローブを内側にずらして,甲状腺を描出する. 甲状腺が一番大きく見える高さで,頸動脈より外側に走査するとC6,またはC6を描出することが出来る. 基本は短軸像で頸椎横突起の前結節と後結節の大きさ(形)で区別する. C5はUシェイプ,C6はVシェイプ,C7は前結節がなく,後結節のみである. 末梢神経と同じように短軸像で断面積を測定し,その後長軸像で径を計測する. 太さはC5<C6<C7の順に太くなるため,同定が必要になる. 特に脱髄性,炎症性,遺伝性末梢神経障害で腫大し,運動ニューロン疾患で萎縮する.