Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

共同企画
日本脳神経超音波学会との共同企画 脳神経超音波最前線

(S541)

頸動脈エコー検査で見つかる甲状腺疾患

Thyroid disease identified in carotid artery ultrasonography

志村 浩己

Hiroki SHIMURA

福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座

Department of Laboratory Medicine, Fukushima Medical University

キーワード :

 近年,脳血管疾患や動脈硬化性疾患のスクリーニングを目的とした頸動脈エコー検査が臨床の現場のみならず,人間ドック等の健康診断においても行われることが増加している.甲状腺は頸動脈に隣接している臓器のため,頸動脈エコー時には好むと好まざるにかかわらず,甲状腺が描出され,甲状腺病変を発見した経験が少なくないと推察される.成人においては超音波検査による甲状腺病変の発見率は極めて高く,甲状腺結節の発見率は20%前後,甲状腺癌の発見率は0.5%前後であり,また,甲状腺のびまん性腫大などのびまん性病変の発見率も10%前後である.発見される病変には臨床上問題にならないものも多く含まれるが,治療を要する疾患も含まれているため,その取り扱いには注意を要する.
 超音波検査において発見される甲状腺結節から精密検査を勧める症例の選定基準については,日本乳腺甲状腺超音波医学会やから細胞診の適応を評価するための取り扱い基準が提唱されており,これを精密検査基準とすることを推奨したい.すなわち,充実性腫瘤は最大径が≤5 mmは原則的には経過観察,>5 mmかつ≤10mmは超音波所見上悪性が非常に強く疑われる場合において要精密検査とする.さらに,>10mmかつ≤20mmは超音波所見上悪性所見が認められた場合要精密検査とし,>20mmは原則的には要精密検査とする.また,甲状腺疾患の既往や家族歴などの病歴聴取も忘れてはならない.
 超音波検診にてびまん性甲状腺疾患が疑われた場合,可能なら甲状腺機能検査を行うことが望ましい.また,カラードプラ検査を加え,びまん性の血流亢進も認められた場合,治療を要するバセドウ病や甲状腺機能低下症であることが多く,積極的に精査を勧奨してほしい.
 本シンポジウムでは頸動脈エコー時に発見されることが多い甲状腺の代表的な所見について,その評価方法と専門医への紹介すべき超音波所見について概説したい.