Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 運動器エコー
運動器エコー 技を極める

(S535)

変形性膝関節症に対する関節外注射

Extra articular injection of knee osteoarthritis

中瀬 順介, 高田 泰史, 下崎 研吾, 浅井 一希, 土屋 弘行

Junsuke NAKASE, Yasushi TAKATA, Kengo SHIMOZAKI, Kazuki ASAI, Hiroyuki TSUCHIYA

金沢大学大学院機能再建学講座(整形外科)

Department of Orthopaedic Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kanazawa University

キーワード :

膝関節は,軟骨,骨,靭帯,半月,滑膜,脂肪体,関節包,骨格筋,腱などから構成され,変形性膝関節症(以下KOA)の痛みの原因も多岐にわたると考えられる.一方,我々,整形外科医は骨や関節の変形の程度が痛みと相関すると教えられ,単純X線像でKOAの診断,重症度分類や手術適応を決定してきた.近年,いくつかの論文で臨床症状と単純X線像の分類は相関しないが,MRI上のBone marrow lesionや膝蓋下脂肪体滑膜炎の程度と臨床症状は相関すると報告されている.また,KOAにおいて膝関節内に疼痛の原因があったのは,全体の75%程度とも報告されている.これらの報告により,これまで我々が行ってきた膝関節内注射だけでの保存的治療法には限界を感じていた.膝関節外由来と考えられる疼痛の中で注目した組織が,滑液包と脂肪組織である.膝関節は大きな可動域を必要とするため,骨性支持は小さく,複数の靭帯,筋・腱組織や関節包が関節の安定性に大きく寄与している.また,大きな可動域や荷重に耐えるため,靭帯,筋・腱,関節包,皮膚などの組織間に摩擦が生じやすい箇所が存在し,それらの箇所には合目的に滑液包や脂肪組織が存在する.
KOAに対して膝関節内注射を施行した後に,効果が不十分な時や膝関節屈伸時に疼痛が強い場合,最終可動域での疼痛が強い場合などに膝関節外注射を考慮する.圧痛,運動時痛を確認し,ターゲットとなる組織を確認する.主なターゲットは半膜様筋包(膝窩部内側部痛),腓骨膝窩筋包(膝窩部外側部痛),浅・深膝蓋下包(膝前方部痛),膝蓋下脂肪体(膝前方部痛),内側側副靭帯包(膝内側部痛)である.膝窩部内側では内側半月板に直接付着する半膜様筋,膝窩部外側では外側半月板に直接付着する膝窩筋が重要となる.膝前方部では膝蓋腱が重要であり,皮膚や皮下組織との間には浅膝蓋下包が,脛骨や膝蓋下脂肪体との間には深膝蓋下包が存在する.また,膝内側部痛では,内側側副靭帯浅層と深層の間に存在する滑液包が治療のターゲットとなる.これらのターゲットを同定し,的確に注射を行うためには超音波および解剖学的知識が必須である.「超音波」と「解剖」が変形性膝関節症に対する新しい治療法である膝関節外注射のキーワードとなる.本発表では膝関節超音波解剖と膝関節外注射の実際について報告する.