Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 運動器エコー
運動器エコー 技を極める

(S534)

凍結肩治療サイレント・マニピュレーション

Manipulation under anesthesia for frozen shoulders

皆川 洋至

Hiroshi MINAGAWA

医療法人城東整形外科

Joto Orthopedic Clinic

キーワード :

凍結肩は自然経過が良いことから,「放置すれば治る」と言われてきた疾患の一つである.治療は,ステロイド注射(関節腔内・肩峰下滑液包内)・NSAIDs投与・理学療法を組み合わせた保存治療,痛みが強く経過が長い症例に対しては関節鏡視下授動術が行われてきた.しかし,日常生活に支障をきたす期間が半年以上にも及び,夜間痛でうつ状態になる患者も珍しくない.従来の治療があまりにも人手・時間・お金がかかり過ぎたため,2010年に超音波ガイド下C5, C6ブロックを組み合わせた徒手受動術MUA: manipulation under anesthesiaを考案した(手技の実際は論文・DVD・インターネットで幅広く情報公開).2013年以降は鏡視下授動術が必要なくなり,経験症例は2018年3月19日現在2,325を数える.MUA症例数の推移は,口コミで広がる患者目線の治療成績を物語る.
MUA症例数の推移(2008-17)
2008200920102011201220132014201520162017
鏡視下授動術2720200000
外来MUA00144172245254260330399448凍結肩に対する複数回実施例,骨折・腱板断裂術後などの2次性拘縮例を含む.
【サイレント・マニピュレーションの適応】
当初はサイレント・マニピュレーションの適応を挙上120度未満の症例とし,120度以上の症例には注射・NSAIDs・理学療法を組み合わせた保存治療を行っていた.受動術後に笑顔で再来する患者を数多く経験した2015年以降は,他動挙上角度が制限され日常生活に支障をきたす症例全てをサイレント・マニピュレーションの適応としている.
【治療成績】
2011.1.1-12.31の1年間に,外来で超音波ガイド下C5,C6ブロック後サイレント・マニピュレーションを行ったのは172肩,このうち挙上角度120度以下の凍結肩は126肩であった.このうち,術後1週,1ヶ月の疼痛,可動域を評価できた107肩を調査対象とした(Follow up rate:84.9% ).平均年齢57.4歳(37-82歳),男40肩・女67肩,右41肩・左66肩・両側3人6肩,平均罹病期間6.5ヶ月(1-48ヶ月).疼痛は夜間痛・安静時痛・運動時痛をNRS: numeric rating scale,関節可動域を挙上・外旋角度で評価した.サイレント・マニピュレーションを行った全症例で早期から良好な治療結果が得られ,従来の保存治療や手術と比較し明らかな医療費抑制効果を確認できた.
術後結果(平均±SD)
術前術後1週(改善率)術後1ヶ月(改善率)
夜間痛NRS5.3±3.1 1.6±2.0(66.1%) 1.0±1.7(76.8%)
安静時痛NRS2.1±2.6 0.8±1.4(61.9%) 0.6±1.3(71.4%)
運動時痛NRS7.4±2.8 3.4±2.0(54.1%) 2.0±1.8(73.0%)
挙上角度95.7±16.5 130.4±17.0 139.8±15.0
外旋角度14.1±16.0 29.7±16.1 32.9±17.5
改善率:MUAで除痛された割合
治療法による医療費の比較
従来の外来治療外来授動術入院授動術
1ヶ月間の医療費11,100円44,800円532,800円
治療期間(仮)12ヶ月間3ヶ月間3ヶ月間
推定総医療費133,200円67,000円555,000円
患者が毎日服薬,週2回リハビリを受けた場合の試算