Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 運動器エコー
運動器エコー 技を極める

(S534)

足関節捻挫の超音波診療

Ultrasound diagnosis and treatment for ankle sprain

笹原 潤, 宮本 亘, 安井 洋一, 根井 雅, 河野 博隆, 松下 隆

Jun SASAHARA, Wataru MIYAMOTO, Youichi YASUI, Masashi NEI, Hirotaka KAWANO, Takashi MATSUSHITA

1帝京大学スポーツ医科学センター, 2帝京大学医学部整形外科学講座

1Institute of Sports Science and Medicine, Teikyo University, 2Teikyo University School of Medicine, Department of Orthopaedic Surgery

キーワード :

 足関節捻挫は,整形外科診療のみならず一般診療においても診療する機会は多い.その画像診断の第一選択として,しばしば単純X線検査が行われている.単純X線検査は骨折の診断においては有用であるが,軟部組織損傷の診断には適さない.足関節捻挫の90%は軟部組織損傷であるため,多くの場合単純X線検査では異常所見がなく,しばしば「足関節捻挫」が診断名として用いられている.その結果,前距腓靭帯損傷や前下脛腓靭帯損傷,二分靭帯損傷など,それぞれ治療法が異なる様々な病態が「足関節捻挫」として誤った保存治療が行われているケースは少なくない.その画像診断の第一選択を単純X線検査から超音波検査に変更することで,適切な診断を行うために必要な情報を短時間かつ低侵襲で入手することが可能となる.
 まずは超音波検査で骨折の評価を行う.超音波は,骨表面の微細な形状変化を捉えることに関して単純X線検査より優れており,骨折の有無を評価する上で超音波検査は有用である.骨折があった場合は,骨折の全体像を評価する必要があるため,単純X線検査を追加することになるが,その頻度は少ない.また,骨折が明らかでない場合でも,関節水腫をきたしている場合は転位のない関節内骨折を生じている可能性があるため,同じく単純X線検査を追加する.
 超音波検査で明らかな骨折が確認できない場合は,引き続いて前距腓靭帯の超音波検査を行う.前距腓靭帯は,足関節捻挫によって最も損傷される頻度が高い靭帯である.また,小児や40歳以上においては,前距腓靭帯実質部の損傷ではなく,しばしば腓骨側に裂離骨折をきたしていることに注意して観察する.その後,疼痛部位に応じて前下脛腓靭帯やリスフラン靭帯背側線維,踵腓靭帯,腓骨筋腱,距骨下関節,二分靭帯,三角靭帯,外脛骨といった部位の超音波検査も行う.
 本発表では,足関節捻挫に対する超音波診療の進め方について,実際の症例を提示しつつ解説する.