Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 救急エコー
救急エコー 超音波を利用した生理学的異常に対するアプローチ~ABCDを中心に~

(S528)

救急でのpoint-of-care肺超音波

Role of point-of-care lung ultrasound in emergency department

丹保 亜希仁

Akihito TAMPO

旭川医科大学救急医学講座

Department of Emergency Medicine, Asahikawa Medical University

キーワード :

近年,point-of-care ultrasound(POCUS)が急速に普及してきている.気道や肺といった空気の存在する臓器においても,超音波を利用してベッドサイドで迅速に検査,診断がされるようになっている.超音波機器の性能向上によって得られる情報も多くなり,POCUSは今後さらに発展していくと思われる.
肺は空気を含むため他の臓器のように実質を映し出すことはできないが,様々なアーチファクトを利用して診断する.実は,日本では1980年代にすでに呼吸器疾患の超音波診断法が確立していた.肺超音波の基本は,胸膜ライン(胸膜エコーコンプレックス)の成り立ちを理解することである.胸膜ラインは壁側胸膜,胸膜間の生理的胸水,臓側胸膜,臓側胸膜直下の肺胞の複合により形成される高輝度の線である.超音波は音響インピーダンスの差が大きい部分で反射するため,肺表面(臓側胸膜下)にある肺胞組織の含気が反射体となり臓側胸膜が高輝度に描出される.臓側胸膜より深部には超音波が到達しないためアーチファクトとなる.一方,気胸では壁側胸膜下に存在する空気によって超音波が全て反射する.そのため,壁側胸膜が高輝度に描出され,壁側胸膜以深は皮膚から壁側胸膜の間の多重反射像となる.肺超音波の正常所見には,以下のようなものがある.
・Lung sliding:胸膜ラインの呼吸に同調するスライド
・Lung comet:胸膜ラインから伸びる短い高輝度線(I-line)
・A-line:胸膜ラインの多重反射
・Lung pulse:心拍動に伴う胸膜ラインの振動
・Seashore sign:Mモードで海と砂浜に見える(添付画像)
・B-line:胸膜ラインから画面深部まで伸びる高輝度線
・Curtain sign:吸気時に胸膜のアーチファクトで実質臓器が覆われる
これらの所見をふまえ,気胸,肺水腫,肺炎,無気肺,胸水,血胸,肺挫傷,肋骨骨折,皮下気腫などを迅速に診断,そしてドレナージなどの治療にも超音波を利用することができる.X線やCT撮影より簡便に,また繰り返し施行することができる点もPOCUSの特徴である.肺超音波を利用する急性呼吸不全,急性循環不全の診断プロトコルとして,bedside lung ultrasound in emergency(BLUE)-protocol,fluid administration limited by lung sonography(FALLS)-protocolがある.救急でのpoint-of-care肺超音波の実際について講演する.