Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー3 技を究める~消化管~

(S503)

消化管エコーはハードルが高いか

Is it difficult to learn a gastrointestinal ultrasonography technique?

山本 真一

Shinichi YAMAMOTO

東海大学医学部付属大磯病院中央臨床検査科

Department of clinicai labolatory, Tokai university oiso hospital

キーワード :

【はじめに】
消化管エコー検査に苦手意識を持っている方は少なからずいるのではないかと思われる.その要因としては,「消化管ガスにより,よくみえない」「消化管の走行をうまく追うことができない」「小腸なのか大腸なのか判別ができない」「虫垂をみつけることができない」などといった検査条件,解剖・知識,手技的な要因が考えられる.ここでは苦手意識を解消する“消化管エコーの技を極める”ためのポイントを中心に述べる.
【消化管エコーにおける装置の設定】
①消化管壁は薄く,比較的浅い深度に描出されるため,画像はできるだけ大きくする.
②探触子は観察部位にあわせて使い分ける(高周波リニア型の併用).
③ゲインを低めに調節し,ダイナミックレンジをやや低めに調節することで,画像条件をやや暗めでくっきりした設定する.
【検査のポイント】
①消化管の解剖・特徴を理解する
 走査は消化管を同定しながら追跡を行うので,周囲臓器との関係を含め,走行を理解しておくとともに,それぞれの消化管の特徴(構造,蠕動の頻度,内容物・ガスの量)を理解しておく.
②層構造を理解する
 壁の層構造は内腔側から高,低,高,低,高の5層構造に描出される.消化管エコーを行うにあたり,それぞれの層がどこに相当するのか知っておかなくてはいけない.超音波検査では貫壁性の情報が得られるのが特徴であり,病変の主座,層構造の状態を読み解くことで疾患の鑑別が可能となる.
③正しい系統的走査を身につける
 消化管には解剖学的に固定されている部位(食道・胃接合部,十二指腸下行部,上行結腸,下行結腸,直腸)がある.消化管の走行に個人差があることが走査を難しくしている要因の1つではあるが,ほぼ決まった位置に描出される固定点を理解することで,部位の同定が容易となり,固定点を繋ぐように系統的に走査を行うことで見落としを防ぐことが可能となる.
④短軸走査を基本として走査する
 消化管は細長い臓器である.短軸走査を基本として走行を追跡し,長軸走査を組み合わせて観察を行う.
⑤探触子で圧迫し,消化管ガスを押しのける
 消化管ガスは検査にとって邪魔な存在である.探触子でゆっくりと圧迫をかけて消化管ガスを押しのけるようにして排除し,病変の描出を行う(場合によっては両手を使う).
⑥どうしたら明瞭に描出されるのか考え,工夫をする
 明瞭な画像を得ることは的確な超音波診断を導き出すために重要である.そのためにはどうしたらよいのか考え工夫をし,走査・観察を行うことが必要である.胃を例に挙げると,胃体部が観察しづらいときは右側臥位へ体位変換をする,病変の主座や層構造など詳細な観察をしたいときは飲水法を行うなどである.
⑦異常?と思ったら詳細に観察する
 通常,消化管は壁が薄く,内腔のガス像により目立たないが,「壁が肥厚している」,「消化管周囲の脂肪織が輝度高く,肥厚している」,「内腔が拡張している」など目立って描出される場合は異常所見の可能性が考えられる.その場合は,高周波探触子も使用し,壁の性状(厚み,層構造,変形),内腔の状態(狭小化・拡張),壁外の変化,硬さ,蠕動について詳細に確認をする.また,拡張がある場合は肛側に追跡し,原因検索を行う.
【結語】
 消化管エコーを習得することは決して容易ではない.観察に適した装置設定と系統的走査を行い,ポイントを押さえて繰り返しトレーニングすることが“消化管エコーの技を極める”ために重要である.