Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー3 技を究める~消化管~

(S502)

消化管の系統的走査をどうやって習得するか?

How to Master the systematic Scanning of GI Tract

長谷川 雄一, 浅野 幸宏

Yuichi HASEGAWA, Yukihiro ASANO

成田赤十字病院検査部生理検査課

Department of Clinical Laboratory, Narita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
 体外式超音波による消化管の走査については,本会掲載の論文「超音波検査による消化管のスクリーニング的検査法とその診断能(1992年畠二郎ら)」が,実質臓器と並ぶ観察対象臓器としての位置づけを確立する機会となった.以後,超音波診断装置の技術革新とともに見えなかったものが見える様になったと表現されるように,消化管についても一つの対象領域として広く認識されるに至った.しかしながら実質臓器の走査に長けた者においても苦手とされる領域でもあり,その走査法習得については一筋縄ではいかないのが現状であろう.
【対象と方法】
 当課に配属された新人技師に既定の教育段階に基づいて教育を行った成果を検証した.当課の教育段階とは,最終目標を急性腹症患者への対応を含む腹部,心臓,血管等を網羅した全身検索に対応できる技師の育成としている.
【結果】
 人間ドック検査の独り立ちは配属8ヶ月後(4月配属の翌年1月)を内規としているが,個人の資質差が大きく未だ成果を獲得することができない者が在籍する一方,種々の専門書の購入や外部講習を受講するなど意識の高い者は技術習得効果も高く,比較的同定の容易な高度炎症を呈する急性虫垂炎,ならびに急性虫垂炎と上行結腸憩室周囲炎の鑑別も精度が高く判別可能となっている.
【考察】
 人間ドックのルーチン検査,一般患者,急性腹症患者と段階を経るに従い,消化管疾患に関与する機会は増加する.特に急性腹症における急性虫垂炎の割合が高いのは周知の事実である.その過程において,系統的走査習得の是非については議論の余地がなく,急性虫垂炎を否定できる情報供与の価値は言うまでもない.また資質面においては,病変を描出する技術と画像解析するに足る臨床知識との両立が基本であるが,残念ながら一方あるいは両者において十分な評価を得るに足らない者を多く経験する近年である.
【結語】
 肝胆膵などの実質臓器のスクリーニング技術を習得したのち,すなわち超音波解剖や装置の調整面において基本知識が確立したのちに比較的観察の容易な上部消化管から習得を始め,最終的に正常虫垂の同定が複数人において可能であることを以って,系統的走査の習得を完了したとする.しかしながら個人資質に依るものが大きく,一概に公開できる報告を得るには相応の工夫と時間を要するものである.今後さらに習練を積み重ね,確立した報告ができるよう検討していきたい.