Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー2 技を究める~肝臓~

(S499)

びまん性肝疾患における走査のポイント

Point of the scanning in the diffuse liver disease

柴田 陽子, 飯島 尋子

Yoko SHIBATA, Hiroko IIJIMA

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学肝・胆・膵内科

1Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, 2Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan

キーワード :

びまん性肝疾患の診断は,まず形態を判断したうえで肝実質の組織性状解析をする.以下,走査にあたり注目する項目を示す.
1)形態の観察
 ①サイズ
大きさで異常は腫大と萎縮に分けられる.肝腫大をきたす疾患は,病期にもよるが急性肝炎,慢性肝炎,脂肪肝,うっ血肝などがあり,萎縮する疾患は,肝硬変,劇症肝炎がある.評価には,一定の拡大率で検査を開始する癖をつけることが重要である.たとえば,肝臓の観察は,常に深度を一定にして評価を行う.
②辺縁
肝実質のスペックルパターンの変化は肝線維化の程度や炎症,脂肪化など種々の原因で変化する.肝表の凹凸は,線維化や壊死の程度により,また原疾患によっても異なる.肝表面の横隔膜腹側は線維化が進行していない場合,平滑に描出される.肝裏面側や胆嚢との境界部などの観察を行う.微細な凹凸が描出される高周波プローブを使用することが重要となる.
2)実質エコーの観察
 ①画像条件
 肝実質の変化を観察するためには,画像条件の設定にも注意しなければならない.機種による特性や被検者によって違うため,各々調整をする必要がある.最近は,コンパウンド処理(空間・周波数)が採用されいている機種があり,スペックルノイズの低減やコントラスト分解能が向上しているが,この処理を行うと肝実質が一見均一に描出されるため,まずは処理をしない状態で肝実質を観察することが重要である.
②実質エコー
基本的にウイルス性の肝障害は,肝実質は部位によらず同様の所見を呈する.異常を捉えるためには正常肝の像を思い浮かべ検査を進める必要がある.例えば,C 型慢性肝炎とB型慢性肝炎の像を比較すると網目状の像は原疾患がB 型慢性肝炎と推測することができる.健常肝の実質像だけでなく各疾患の基準に繋がる組織病態像を知ることが,びまん性肝疾患の異常所見を捉えるためのポイントである.
3)脈管の観察
 肝静脈や門脈は,静脈系血管であり肝硬変などの門脈圧亢進に伴う変化を来たしやすく,拡張や狭小化の変化が現れる.脂肪肝では,超音波ビームの減衰や腫大した肝細胞による圧排を反映し脈管は不明瞭化する.脈管の変化は,カラードプラを用いた血流方向を確認することも重要である.Bモードでは判断できない逆行性の門脈血流や新鮮な門脈血栓などの発見にもつながる.
4)Elastographyを用いた観察
Elastographyを用いた肝臓の硬さ計測により,客観的な肝臓の線維化診断が可能となった.Bモードだけでは,判定できない画像でも,数値化することで線維化の進展度が推測できるようになってきた.計測のコツは,肝右葉の前区域を肋間より観察し,体表の厚みを鑑み計測する.測定する部位を一定にすることがポイントであり,経過観察にも有用である.
【まとめ】
走査は,まず大きく全体をスキャンし,必要な部分を拡大し観察し,カラードプラやElastographyなどを追加する.
びまん性肝疾患は,組織と合致する画像を呈するため,その走査のポイントは,病態を充分理解し実際の検査に活かすことである.