Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー1 技を究める~胆膵~

(S494)

膵胆道領域のピットフォールとポイント

Pitfalls and practical solutions of Ultrasound in Pancreatobiliary disease

岡庭 信司

Shinji OKANIWA

飯田市立病院消化器内科

Gastroenterology, Iida Municipal Hospital

キーワード :

膵胆道の描出のポイントは,解剖学的な位置関係の理解と体位変換による消化管ガスの除去である.
1.胆嚢の描出
 胆嚢は食事や体位により容易に変形するため頸部から底部まできちんと描出することは意外に難しく,特に結石が陥頓しやすい頸部~ハルトマン嚢と癌の好発部位である底部がピットフォールとなりやすい.通常は,左側臥位の右肋骨弓下横走査と右季肋下縦走査に仰臥位の右肋間走査を併用し,1画面の拡大表示で,胆嚢頸部~ハルトマン嚢,体部,底部を別々に描出するようにしている.
 胆嚢頸部からハルトマン嚢は,右肋骨弓下横走査で右肝管の近傍をゆっくり足側に探触子を移動することにより明瞭に描出できることが多い.一方,底部は多重反射により病変が隠蔽されることがあるため,近位部のSTCを暗めに設定し,探触子を敢えて体表に斜めに当てて底部までの距離を稼ぐとアーチファクトの少ない画像が得られる.高周波プローブを用いるとさらに良好な画像が得られる.
2.肝外胆管の描出
 肝外胆管は肝門部領域胆管と遠位胆管に分けられ,肝門部領域胆管は門脈のやや左を足側に走行するが,遠位胆管は膵上縁から右背側に戻って乳頭に連絡する逆“く”の字の走行となることや,胃や十二指腸といった消化管の背側に位置することから描出が困難なことがある.
 胆嚢と同様に左側臥位の右肋骨弓下縦走査で肝門部領域胆管の長軸像をまず描出する.その後探触子を徐々に外側に向けながらゆっくり足側に移動させ(逆“く”の字のイメージ)乳頭近傍まで遠位胆管を描出する.肝外胆管が描出出来たら,引き続き探触子を上腸間膜静脈が描出できる位置まで正中側に水平移動させ,その後十二指腸下行部まで探触子を移動させると膵頭部の観察も可能となる.
3.膵臓の描出
 膵頭部のgroove領域と腹側膵から鉤状突起および膵尾部は,十二指腸のガスの影響を受けやすく,主膵管や肝外胆管の拡張といった間接所見も来しにくいため特に注意が必要である.膵臓の描出は,仰臥位あるいは軽くギャッジアップした状態での心窩部縦横走査と左肋間走査を基本走査としている.頭体部の描出不良例では座位や左側臥位での縦走査,尾部の描出不良例には右側臥位の心窩部斜め横走査を適時追加すると描出範囲が広くなることが多い.
 心窩部縦走査では,上腸間膜静脈の背側に位置する腹側膵をしっかり描出することが重要である.消化管ガスにより尾部の描出が不良な時には左側臥位にすると良い.心窩部横走査では,胃空腸のガスを除去するために肝左葉からスキャンを開始し,探触子を足側に水平移動すると尾部が描出できる.患者の呼吸や探触子の移動により尾部を十分観察した後,探触子を右肩上がりにすると頭体部まで長く描出できる.画像を拡大表示し探触子を頭側に移動した後,半時計方向に探触子を立てていくと膵頭部主膵管や膵内胆管の長軸像が描出できる.このまま十二指腸の水平部まで探触子を水平移動し,その後胃前庭部から球部あたりまで頭側にしっかり移動して膵頭部の観察を行うと良い.左肋間走査では,仰臥位で左腎を描出した後,腹側の肋間に探触子を移動し脾動静脈をメルクマールとして脾門部から尾部を描出すると良い.
 描出のポイントは,①消化管ガスによる遮蔽を減じるため検査開始時と終了時の2回膵臓を描出する,②頭体部の描出不良例は座位や左側臥位,③尾部の描出不良例では右側臥位や飲水法を併用する,④膵管拡張や5mm以上の小嚢胞を有する例では,拡大表示として高周波プローブで主膵管をしっかり描出することである.