Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 運動器
パネルディスカッション 運動器1 先への一歩~超音波ガイド下注射~

(S475)

下肢のしびれ・痛みに対する超音波ガイド下注射

US-guided intervention for numbness and the pain of lower limbs

鈴江 直人

Naoto SUZUE

徳島赤十字病院整形外科

Department of Orthopedics, Tokushima Red Cross Hospital

キーワード :

【背景】
われわれ整形外科医にとって,運動器疾患に対しての注射は古くからの有用な治療手技の1つである.しかしながら注射が有効であった場合,それがどの組織の何に効いたのか,あるいは次回打っても同じように効くのかは明確ではなかった.一方で十分な効果が得られなかったとしても,その原因が部位の問題か,あるいは薬液の種類の問題かについてもはっきりしないことが多かった.しかし近年,機器の進歩によって運動器領域での超音波診療が発展し,運動器疾患への注射は,超音波ガイド下に目的の組織に正確に薬液を注射することがGold standardとなりつつある.さらには,ただの生理食塩水を注射しただけで痛みやしびれが改善するという「ハイドロリリース」という概念も生まれた.
【目的】
下肢のしびれや疼痛を来たす疾患に対しての超音波ガイド下注射の実際について紹介する.
【症例】
①腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛に対しての仙骨ブロック.これまでは触診で仙骨裂孔をイメージし,注射後のloss of resistanceで硬膜外腔に入ったかどうかを確認していたが,超音波エコーにて仙骨裂孔を描出し,交差法で仙尾靱帯下に針先を進めることで容易に薬液の注入が可能である.②鵞足部痛に対するハイドロリリース.膝関節内側の痛みを訴える患者の中で,関節裂隙ではなく鵞足部に痛みがみられる症例に対しては,生理食塩水などによる超音波ガイド下ハイドロリリースが著効する.③膝関節鏡手術後の膝蓋下脂肪体障害に対してのハイドロリリース.膝関節鏡手術においては膝蓋下の内外側にポータルを作成して処置を行うが,このポータルが膝蓋下脂肪体を貫いて作成されるため,術後癒着を起こして同部位の疼痛や膝蓋骨の可動性を妨げる原因になる症例がある.こういった例に対して超音波ガイド下に膝蓋下脂肪体と膝蓋骨間,膝蓋腱間などをリリースすることで改善が得られることが多い.④足根管症候群に対する脛骨神経リリース.足部内側から足底にかけての痛みやしびれの原因として足根管での脛骨神経の圧迫が原因になることが多いが,これについても生理食塩水でのハイドロリリースで即時効果が認められる.⑤足底腱膜炎に対してのヒアルロン酸製剤注射.足底腱膜起始側と踵骨間にヒアルロン酸製剤を注射すると疼痛軽減が得られるが,この間隙は非常に狭いため,超音波ガイドが必須である.
 これらの症例以外にも股関節,距骨下関節などの穿刺がやや困難な関節への注射や,アキレス腱などの術後の癒着に対してハイドロリリースを行う際には,刺入部を正確に把握するために超音波ガイドが必須である.