Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 血管
シンポジウム 血管4 血管エコーの新たな展開

(S456)

血管内皮機能検査の新たな展開

New development of flow mediated dilation

三木 俊

Takashi MIKI

東北大学病院生理検査センター

Clinical Physiology Center, Tohoku University hospital

キーワード :

【はじめに】
血管内皮細胞は,血管の内側にある一層の薄い細胞層である.この薄い細胞層は血管恒常性(ホメオスタシス)の維持するための物質(一酸化窒素:NO,プロスタグランジンI2,エンドセリン,アンジオテンシンⅡなど)の産生・分泌を行い,血管収縮・弛緩(血管トーヌス)を調整している.血管内皮機能検査の血流依存性血管拡張反応(FMD;flow mediated dilation)は早期の動脈硬化を反映しているとされ,心・脳血管疾患などの予後予測指標や投薬効果判定,健診などで用いられている.
【方法】
FMD検査は5分間の前腕阻血(加圧:収縮期血圧+50mmHg)にて反応性充血による上腕動脈拡張の程度(解放後3分間記録)を評価する検査であり,FMD(%)=(最大拡張血管径-安静時血管血管径)/安静時血管径×100にて算出される.FMDが低いと内皮細胞が障害され,NO)の産生が悪く,早期動脈硬化の所見となる.FMDの基準値はガイドライン等に明確な記載はないが,正常参考値は6~7%以上で,この値より低ければ低いほど内皮細胞の働きが弱まっており,3%以下では心血管イベント発症の危険が高いと報告されている.
【装置】
超音波検査を用いたFMD測定の方法は3種類存在している.
① 一般の超音波装置を用いた方法では,7~10MHzリニア型探触子にて上腕動脈の描出を行う.フォーカスやビームステアリング機能を用いて血管の内膜near wall およびfar wall を的確に描出し,最適な描出部位にマーキングしておく.またマーキングテープを用いることで計測時の位置情報が明確になる.計測はB-mode上で時層を合わせた3点以上の平均値を使用する.プローブ操作は入射角度,圧着に注意し,手首およびプローブの固定を行うが,専用の固定具も存在する.
② FMD測定機能が搭載された超音波装置では,B-mode画像は良好だが,RF信号が一点のため,検査時のズレに対応出来ない場合も多い.検査時のズレがなければ正確な測定が可能である.また,頸動脈エコーにてスティフネスパラメータβの測定機能が搭載されており,血管弾性も測定可能である.
③ FMD自動測定専用装置では,H型プローブを用いて半自動的に血管の微細な調整機能が搭載された装置である.測定には前の血管をしっかり描出できれば比較的初心者でも測定な可能な装置になっている.UNEX EF38Gは画像中心部の血管横断像に複数のRF信号が出ているため,多少のズレがあった場合にも対応可能な装置である.通常,FMD測定では駆血前の画像にて安静時の計測を行うが,駆血中もしくは解放直後をベース径にしたほうが良いという報告もある.このEF38Gでは駆血中と解放直後のベース径にてFMDを自動算出する機能を搭載している.
【結果の解析と今後】
UNEX EF38Gを用いた検査では通常のFMD以外に駆血中に血流量を減少させた際に,血管が安静時と比較してどの程度収縮したかを測定する指標である低血流依存性血管収縮反応(L-FMC;Low flow-mediated constriction)や駆血解除直後の血管径をベースとしたC-FMD(Composite- flow mediated dilation)も算出可能である.また,トレンド解析にて血管の拡張量に関する時定数や拡張開始時間から拡張時間,拡張面積など様々な解析が可能である.現在,FMDを中心とした内皮機能関連の文献が多く存在しているが,これらの項目について当センターにて行った検討の報告と今後の新たな展開について述べたい.