Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 泌尿器
シンポジウム 泌尿器1 低侵襲超音波診療update-超音波ガイダンス治療・下部尿路機能評価を中心に-

(S428)

前立腺癌におけるFocal therapyのためのMRI-超音波融合画像ガイド下生検

MRI/ultrasound fusion prostate biopsy for focal therapy of prostate cancer

齋藤 一隆, 松岡 陽, 吉田 宗一郎, 戸田 一真, 吉村 亮一, 藤井 靖久

Kazutaka SAITO, Yoh MATSUOKA, Soichiro YOSHIDA, Kazuma TODA, Ryoichi YOSHIMURA, Yasuhisa FUJII

1東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学, 2東京医科歯科大学大学院放射線科

1Urology, Tokyo Medical and Dental University, 2Radiology, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

限局性前立腺癌に対する根治療法は,制癌効果に優れるものの,排尿・性機能への影響より,過剰治療となりうることが示されている.癌病巣を特異的に治療する前立腺部分治療(focal therapy)は,制癌と機能温存の両立を図る新規低侵襲治療であるが,その施行においては,正確な局在診断に基づく,症例選択と治療域設定が重要である.前立腺癌の特性として,多中心発生性と病巣間の多様性があり,局在診断,ひいては標的病巣の設定が時に困難となりうることが指摘されている.前立腺癌の進展は,悪性度の高い,または容量の大きいsignificant cancerである主病巣(Index lesion)によることが示唆されており,特に部分治療において,主病巣,およびsignificant cancerの評価が重要である.従来の系統生検では,主病巣の評価が十分でないことが指摘されていたが,近年,マルチパラメトリックMRIによる主病巣検出の有用性が示され,MRIに基づく選択的な標的生検が行われるようになってきた.
MRI標的生検にはMRIをリアルタイム画像へレジストレーションする様々なナビゲーション法があるが,MRI-超音波融合画像(MRI/US fusion)ガイド下生検が,精度と利便性からその有用性が指摘されている.なかでも弾性融合(elastic fusion)機能はMRIをリアルタイムに弾性変形させて超音波との融合画像を可能とし,より正確な標的生検に結び付くことが期待される.当施設では電磁追跡型の同生検システムを導入しており,MRI上に設定した標的は生検時超音波画像上に表示され,ガイダンス機能に従って容易に生検を行うことができる.データの統合管理機能により,生検後の病理所見とMRIの照合を放射線科医と泌尿器科医で共有し,より精細な主病巣の解剖学的把握による標的部位設定が可能となる.また,MRIと系統生検を組み合わせた区域評価法を用いることで,片葉単位で96%,1/4区域単位で91-92%の精度で適切な非治療域を設定できることを当教室から報告している(Eur Urol 2014, BJU Int 2016).すなわちMRI-超音波融合画像ガイド下生検と系統生検を組み込むことで,的確な前立腺部分治療の症例選択および温存領域設定が可能となる.
当施設では,2010年より小線源療法を用いたfocal therapy(160Gy)を低中リスク癌42例に施行している.全例でPSA 値は低下し,国際前立腺症状スコアは一過性上昇後,1年後には治療前値まで低下した.国際勃起機能スコアは治療前後で変化を認めず,性交可能例では射精も維持された.19例に評価生検(12-39か月後)を行い,治療域からの癌検出例はいなかった.8例で非治療域から癌を検出したが,SCは1例であった.
さらに,放射線治療後の前立腺内局所再発例に対しても,MRI-超音波融合画像ガイド下生検の所見に基づき,救済小線源部分治療を行い,良好な結果を得ている.
以上よりMRI-超音波融合画像ガイド下生検は,正確なsignificant cancerの局在診断を可能とし,前立腺癌における病巣標的治療であるfocal therapyにむけた有用な生検法である.