Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺2 甲状腺癌の超音波によるサーベイランス (アクティブサーベイランスを含む)

(S422)

甲状腺微小癌のアクティブサーベイランスにおける超音波検査について(がん研有明病院)

Ultrasonography in active surveillance of thyroid microcarcinomas in our hospital

山田 恵子, 杉谷 巌, 蛯名 彩, 戸田 和寿, 三谷 浩樹

Keiko YAMADA, Iwao SUGITANI, Aya EBINA, Kazuhisa TODA, Hiroki MITANI

1公益財団法人がん研究会がん研有明病院超音波検査部・画像診断部, 2日本医科大学大学院医学研究科内分泌外科学分野, 3公益財団法人がん研究会がん研有明病院頭頚科

1Department of Ultrasound, Department of Diagnostic Imaging, Japanese Foundation for Cancer Research, Cancer Institute Hospital, 2Department of Endocrine Surgery, Nippon Medical School, 3Division of Head and Neck Surgery, Japanese Foundation for Cancer Research, Cancer Institute Hospital

キーワード :

 甲状腺乳頭癌には生涯にわたり生命に影響しないものが多く含まれることは,ラテント癌と臨床癌の頻度に100倍以上の差があること,先進諸国における甲状腺癌罹患率の上昇が死亡数減少につながっていないことなどから広く知られるようになった.
最大径1cm以下の微小乳頭癌(PMC)のうち明らかな浸潤・転移のない症例について,非手術経過観察を行う前向き臨床試験は日本の2つの病院(隈病院,がん研病院)において1990年代に開始された.これまでに両病院で2,000例を超えるPMCの経過観察結果が蓄積されているが,腫瘍径が3mm以上増大するのは5~7%,リンパ節転移が出現するものは1%程度に過ぎず,遠隔転移や癌死を来した症例はない.このことから無症候性PMCに対する非手術経過観察は2010年,「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」において治療選択肢のひとつとして容認された.一方で転移や浸潤が臨床的に明らかなPMCの中には予後不良なものがあり,これらは絶対的手術適応であると明記されている.
 超音波検査は微小癌の診断,アクティブサーベイランス適応の判断,経過観察に不可欠であり,今後の課題(進行する症例を予測する,あるいは放置可能な超低危険度癌をあらかじめ診断するなど)に対応するためにも重要な手段である.
 当院の微小乳頭癌384症例,480病変の平均6.8年の超音波検査による経過観察から,福岡らは,高齢であるほど石灰沈着が強く,ドプラ法で血流信号が乏しい傾向があること,時間の経過とともに石灰沈着が増強し血流信号が減少する傾向がみられ,これらは非進行症例であることの有意な指標となると報告した.