Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺1 リンパ腫の鑑別診断とマネージメント

(S418)

甲状腺リンパ腫の臨床

The clinical findings of thyroid lymphoma

宮川 めぐみ

Megumi MIYAGAWA

宮川病院内科

Internal Medicine, Miyagawa Hospital

キーワード :

【病態】
甲状腺を原発とするリンパ腫は稀な疾患であり,米国では甲状腺原発悪性腫瘍の1~5%,悪性リンパ腫の1~2.5%を占めるとされている.本邦では悪性リンパ腫のうち2.2%という報告があるが,本邦における発生頻度の報告は少ない.甲状腺リンパ腫ではびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)の頻度が高く,T細胞リンパ腫やHodgkinリンパ腫は稀である.また,橋本病など自己免疫性甲状腺炎を基盤として発症するMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リ ンパ腫も比較的よく認められる.
【疫学】
好発年齢は50~80歳で平均60歳代であり,40歳未満での発症は稀で,性差は女性が男性の1~2 倍とされている.臨床的には腫瘍が急速に増大し,腫瘍による気道の圧排や狭窄から呼吸困難や嚥下困難をきたして緊急の気道確保の対処が必要となる場合もある.そのほか,嗄声(反回神経麻痺),発熱などもみられる.
【診断】
超音波では腫瘤のエコーレベルは著明に低下して後方エコーの増強を伴い,内部の血流も増加していることが多い.CTでは甲状腺実質に比べて低吸収域となり,MRIではT1強調画像,T2強調画像ともに均 一な低信号となる.病理学的検査では,穿刺吸引細胞診が一般的に行われているが,細胞診でのリンパ腫の診断は7割程度であり,悪性リンパ腫が疑わしい場合はopen biopsyを行うのが 望ましい.
【治療】
DLBCLの治療は,CHOP療法を中心とする化学療法,放射線外照射療法が標準 であり,最近ではキメラ型抗CD20抗体 のrituximabによるモノクローナル抗体療法も併用してR-CHOP(CHOP+rituximab)と放射線療法を 組み合わせて行うことが多い.
【予後】
リンパ腫の予後は比較的良好であり10年生存率は 60%である.甲状腺リンパ腫の予後は病理組織型と病期により異なり, 病理組織型別の5年生存率はDLBCL75%,MALT リンパ腫96%となっている.