Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 甲状腺
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺がん

(S410)

小児甲状腺癌から解る甲状腺癌の発病機構

Pediatric thyroid cancer gives a hint of thyroid carcinogensies

菅間 博

Hiroshi KAMMA

杏林大学医学部・病理学講座

Department of Pathology, Kyorin Universeity

キーワード :

小児甲状腺癌は稀で,発生頻度は人口100に1人程度と考えられていた.30年前のチェルノブイリ原発事故では,小児甲状腺癌が多発した.その発病機構(Pathogenesis)として,甲状腺に集積,貯留した放射性ヨードによる内部被爆による発癌機構が考えられている.東日本大震災に伴う福島第一原発事故から6年半が経過した.福島県では,18歳以下の約30万人を対象とした甲状腺癌のマス・スクリーニングが行われ,昨年末の時点で145人に甲状腺癌が発見されている.この数はこれまで報告されていた小児甲状腺癌の発症率の百倍以上にあたる.マスコミでは原発事故との因果関係を強調されているが,放射線科学的には,福島原発事故の内部被曝線量はチェルノブイリに比べかなり少ないことが検証されている.即ち,福島の小児甲状腺癌は内部被曝により発生したのではなく,以前は発見されなかった無症候性癌がマス・スクリーニングにより発見されたと考えられる.これらの事実から甲状腺癌のPathogenesisについて何が解るのか?
 本講演では,甲状腺のホルモン臓器としての特異性,甲状腺癌の発症年齢と小児甲状腺癌の定義,甲状腺癌の遺伝子変異と増殖速度の制御機構,小児甲状腺癌の病理組織学的特徴等について,最近の知見を含め解説する.さらに,それらを基にしてチェルノブイリと福島の小児甲状腺癌の事実から解る甲状腺癌のPathogenesisについて考察する.