Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
パネルディスカッション 乳腺3 非腫瘤性病変における超音波画像評価のポイント

(S405)

バスキュラリティとエラストグラフィを加味した乳腺非腫瘤性病変の評価法

Evaluation of Non-Mass Abnormalities of the Breast by Vascularity Examination and Elastography Adjunct to B-Mode Ultrasonography

奥野 敏隆, 久下 加奈栄, 廣瀬 圭子, 登尾 薫, 内田 浩也

Toshitaka OKUNO, Kanae KUGE, Keiko HIROSE, Kaoru NOBORIO, Hiroya UCHIDA

1神戸市立西神戸医療センター乳腺外科, 2神戸市立西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Breast Surgery, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center

キーワード :

【目的】
乳腺非腫瘤性病変においては,Bモード超音波はもとより,カラードプラなどの血流所見,エラストグラフィ所見に関するエビデンスは乏しい.非腫瘤性病変について,病理所見をもとに超音波像の評価法の検討を行った.
【対象と方法】
2015年12月から2017年11月の2年間に手術あるいは針生検を行い,組織診断が確定した非腫瘤性病変55例(乳癌 41例,良性14例)
を対象とした.同期間の乳腺腫瘍手術例は279例であった.乳房超音波診断ガイドラインによる非腫瘤性病変の超音波分類,カラードプラによるバスキュラリティ,Tsukuba elasticity score,病理組織像について振り返り,組織推定に有用な所見の抽出を試みた.
【結果】
乳癌41例の超音波分類は乳腺内の低エコー域 36例(付随病変として点状エコー 17例,構築の乱れ6例,乳管拡張あるいは小嚢胞2例),多発小嚢胞 2例,乳管の異常 1例,点状エコーのみ 2例であった.組織診断について,乳腺内の低エコー域36例のうち25例がductal carcinoma in situ(DCIS),浸潤性乳管癌 6例,浸潤性小葉癌 4例であった.多発小嚢胞2例のうち1例は低悪性度DCIS,1例はencapsulated papillary carcinomaであった.乳管の異常の1例はpapillary type DCISであった.点状エコーのみのものは高悪性度DCISとpapillary type DCISが1例ずつであった.
 良性14例の超音波分類は乳腺内の低エコー域 10例,乳管の異常 3例,多発小嚢胞 1例であった.組織診断について,乳腺内の低エコー域10例中4例が腺症,3例は上皮過形成,2例が乳腺炎,1例がmucocele-like lesion + ADHであった.乳管の異常3例のうち2例が乳管内乳頭腫,1例が乳管拡張症であった.多発小嚢胞 の1例は乳管内乳頭腫 + 腺症であった.
 カラードプラにおけるバスキュラリティについて,良性ではバスキュラリティ(-): 2(14%),(+): 5(36%),(++): 6(43%),(+++): 1(7%).乳癌では(-): 2(5%),(+): 18(44%),(++): 17(41%),(+++): 4(10%)であった.
 Elasticity scoreは良性ではscore 1: 0,score 2: 2(33%),score 3: 4(67%).乳癌ではscore 1: 1(4%),score 2: 14(52%),score 3: 9(9%),score 4: 1(4%),score 5: 2(7%)であった.
【考察】
乳癌41例中30例(73%)が非浸潤癌であり,浸潤癌11例はすべて乳腺内の低エコー域を呈し,うち4例(36%)が浸潤性小葉癌であったことは組織推定の一助となるであろう.乳腺内の低エコー域以外の所見を呈したものは5例(12%)のみであり,すべて非浸潤癌で,うち3例が乳頭状病変であったことも注目に値する.良性について,乳腺内の低エコー域10例中8例がいわゆる乳腺症であり,乳管の異常と多発小嚢胞の4例中3例が乳頭状病変であった.バスキュラリティとelasticity scoreについて,良性と乳癌を鑑別できるような所見は得られなかった.ただし,バスキュラリティ(+++)であったのは高悪性度のDCISの1例と浸潤癌の3例のみであり,バスキュラリティ豊富なものは確実な組織生検を要する.さらにelasticity scoreがscore 4以上であったのは高悪性度DCISの1例と浸潤癌の2例のみであり,スコアの高いものは乳癌を疑う必要がある.
【結論】
非腫瘤性病変の超音波像の評価に際しては,乳管内増殖性病変,乳頭状病変,間質浸潤を主体とする浸潤癌,炎症といった病理像のみならず,血流や硬さの病理も理解することが肝要である.