野間 翠, 松浦 一生, 板本 敏行, 鳥本 愛弓, 難波 浄美, 西阪 隆

Midori NOMA, Kazuo MATSUURA, Toshiyuki ITAMOTO, Ayumi TORIMOTO, Kiyomi NANBA, Takashi NISHISAKA

¹県立広島病院消化器・乳腺外科, ²県立広島病院臨床検査科

¹Department of Gastrointestinal and Breast Surgery, Hiroshima Prefectural Hospital, ²Laboratory for Clinical Investigation, Hiroshima Prefectural Hospital

キーワード :

【背景】乳腺疾患の拡がり診断において，乳房造影超音波検査（CEUS）は手術と同じ体位でできるリアルタイム性のため有用性が高いが，MRIと比較して非腫瘤性病変の描出に弱い，観察断面が限られるといった短所も考えられる．
一方，乳管内乳頭状病変はWHO分類第4版で独立した概念として分類されたが，その画像において独特の特徴を備えている．良性の乳管内乳頭腫，悪性の乳管内乳頭状癌いずれも乳管内病変や混合性腫瘤を呈し，充実部分の血流は豊富である．針生検等による良悪性の鑑別はやや困難とされ，CEUSによる鑑別が有用との報告もみられる．
今回我々は乳管内乳頭状病変の拡がり診断につき，CEUSの有用性の検討を行った．
【対象】2013年9月～2017年12月に切除を行った乳管内乳頭状病変のうち術前にCEUSによる拡がり診断を行った29例を対象とし，CEUSの有効性を検討した．最終診断は良性：乳管内乳頭腫13例，悪性：16例（Intraductal papillary carcinoma5例，Encapculated papillary carcinoma2例，Solid papillary carcinoma1例，DCIS4例，乳頭腺管癌4例）の内訳であった．
【結果】CEUSが有用である状況は以下の3通りがあった．各々につき症例を提示しながら解説を行う．（1）嚢胞内病変の充実成分の確認　（2）血腫と病変成分の識別　（3）病変の乳管内進展範囲の診断
症例（1）：70歳代男性　0.9cmの液面形成を呈する小嚢胞を指摘，MRIでは嚢胞壁のみの造影を認めた．CEUSでは嚢胞の皮膚側に平坦な充実性成分を認め病変の局在の確認，切除マージンの決定に有用であった．（病理診断：DCIS）混合性腫瘤の内容液が血性成分である場合にはMRIで高信号を呈するため造影される充実成分の確認が困難であることもあるが，CEUSでは容易に識別が可能である．
症例（2）：30歳代女性　乳管内乳頭腫に対して乳管区域切除施行後，乳頭腫の再発と思われる乳房内出血を来していた．乳房内出血による高信号域のためMRIによる拡がりが困難であったがCEUSによる造影域は切除標本で病変の局在に一致していた．（病理診断：乳管内乳頭腫）
症例（3）：40歳代女性　6cmの巨大な混合性腫瘤とMRIで嚢胞外側に広範囲の乳管内進展を認めていた．Bモードでは乳管内進展の部位に等エコーの小腫瘤散在をかろうじて認識できる程度であったが，CEUSでその拡がり範囲は明確に造影され，切除範囲の決定に有用であった．（病理診断：DCIS）乳管内乳頭状病変は一見限局性の病変に見えるが主病変外への乳管内進展の頻度は意外に高く（12/29例，41.4％），等エコーを呈することから切除範囲の判断が困難であったり，断端陽性となることがある．このような場合にCEUSは有用であると考えられるが，観察断面が比較的限局されるため前もってMRI等で全体像の評価を行っておくのが望ましいと考えられる．
【考察】乳管内乳頭状病変は血流が豊富であり，MRIやBモードでの評価が不十分となる可能性を持つためその拡がり診断に特にCEUSが有用であると考えられる．