Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 乳腺
シンポジウム 乳腺1 Bモード,エラストグラフィ,バスキュラリティ評価を駆使した乳房超音波検査-Comprehensive Ultrasoundで病理像を想定しよう

(S388)

Bモード超音波にエラストグラフィとバスキュラリティ評価を追加した乳腺病理推定

Estimation of Breast Pathology Using Elastgraphy and Vascularity Examination Adjunct to B-Mode Ultrasonography

奥野 敏隆

Toshitaka OKUNO

神戸市立西神戸医療センター乳腺外科

Department of Breast Surgery, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center

キーワード :

 乳房超音波の基本はBモード法である.組織像を反映した画像を超音波組織特性により読み解く形態診断である.エラストグラフィは組織の歪みの程度から組織推定を行う.カラードプラをはじめとしたバスキュラリティの評価はその多寡と形態から血流の病理像を推定する.これら3つの異なる手法で得られた情報は病変を異なる側面から見ており,相補的に解析することにより乳房超音波の診断能の向上が期待できる.組織像別にBモード+エラストグラフィ+バスキュラリティの評価法を述べる.
1)乳腺嚢胞: Simple cystは境界明瞭平滑,内部無エコー,後方エコー増強といった所見からBモードのみで診断は容易である.ドプラ法では血流を欠き,エラストグラフィでは特徴的なBGR signを呈する.Complicated cystにおいてもこれらドプラ法とエラストグラフィ所見が嚢胞である傍証となることがある.逆に,一見嚢胞に見えても内部に血流シグナルを認めることで乳癌の見落としを防ぐことができる.
2)線維腺腫: 2cm以下の境界明瞭な縦横比の小さなものはBモードで診断容易である.血管は正常の形態を保って増生し,その大きさと分布は均一であり,境界に沿った血流,なだらかで均一な血流が特徴的である.エラストグラフィではスコア1,2が大半を占め,せいぜいスコア3である.
3)乳管内乳頭腫: 線維血管間質を軸に上皮細胞が増生する特徴的な乳頭状組織構築を呈する.Bモードでは混合性や充実性腫瘤,乳管内エコーと多彩な像を呈する.1本の流入血流が特徴的であるが,しばしば乳癌を疑うような高いバスキュラリティを呈することがある.エラストグラフィでも比較的高いスコアを呈する.
4)通常型の乳腺浸潤癌: 間質増生を伴って不規則に増殖して境界部高エコーや境界線断裂を伴う不整形腫瘤を呈し,Bモードで組織像を読み取ることは比較的容易である.ドプラ法では一般にバスキュラリティは高く,貫入する血流など特徴的な血流を呈する.間質増生の強いものではバスキュラリティが乏しいことがあるが,エラストグラフィではスコア4,5を呈し,相補的な判断が可能である.
5)浸潤性小葉癌:腫瘤内部においては信号が減衰し,バスキュラリティが乏しいが,境界部から周辺に間質反応を伴い腫瘍が浸潤するため,周辺の血流増加を呈することが多い.非腫瘤性病変を呈することも多く,エラストグラフィでは多様な所見を呈する.
6)粘液癌:病理学的な典型例においてはスリット状エコーを伴う内部等エコーから高エコー,後方エコー増強といった特徴的なBモード像を呈する.皮下脂肪との識別が困難なことがあるが,ドプラ法での血流信号,エラストグラフィで硬く表示されることで存在診断が可能である.
7)非浸潤性乳管癌(DCIS):多彩な組織像を呈するため亜型別の評価を要する.乳頭状病変に関して,乳管内乳頭腫が1本の流入血流を認めることが多いのに対して,嚢胞内乳頭癌や充実乳頭癌などにおいては新生血管の増生を反映して複数の流入血流を認める.また,乳腺内の低エコー域を呈するDCISにおいては,乳頭状病変を除いて乳管内に増生する腫瘍に血流は認められず,間質の血管の増生を反映したバスキュラリティが認められる.一般に乳腺症よりもバスキュラリティが高く,Comedo typeでは豊富なバスキュラリティを認めることが多い.エラストグラフィではスコア3までのことが多い.
 大事なことは同じ探触子でこの3つの手法をボタンひとつの切り替えで行えることである.すなわち,適正な探触子の操作,装置の設定が必須ということである.