Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科3 双胎の妊婦健診における超音波検査のあり方

(S369)

一絨毛膜双胎における超音波 ~新生児管理をどう予測するのか?~

How to predict the neonatal care by the prenatal ultrasound examination in monochorionic twins

岩垣 重紀, 高橋 雄一郎, 千秋 里香, 永井 立平, 浅井 一彦, 小池 雅子, 桂 大輔, 安見 駿佑, 古橋 円, 川鰭 市郎

Shigenori IWAGAKI, Yuichiro TAKAHASHI, Rika CHIAKI, Ryuhei NAGAI, Kazuhiko ASAI, Masako KOIKE, Daisuke KATSURA, Shunsuke YASUMI, Madoka FURUHASHI, Ichirou KAWABATA

1国立病院機構長良医療センター産科, 2松波病院産婦人科

1Obstetrics, National Nagara Medical center, 2Obstetrics and Gynecology, Matsunami general hospital

キーワード :

【目的】
一絨毛膜双胎において双胎間輸血症候群(TTTS)は児の予後不良因子として広く認識されている.胎盤上の血管吻合を介して起こる双胎間での血液移動のアンバランスがTTTSの主な原因と考えられており,循環過多となる受血児に出生後,心不全に対する治療が必要となる場合があるという報告は以前よりされている.一方でTTTSの診断基準は満たさないが,一児に心拡大を認め出生後に心不全に対する治療が必要であったという報告もあり,双胎間で共有される内分泌的な環境が一絨毛膜双胎特有の病態を複雑にしていると考えられている.TTTSを発症した場合,出生後の循環管理が必要となる可能性は認識されているが,TTTSの基準を満たさない場合でも,出生後に集中的な循環管理を要する症例は存在する.しかし,そのような症例に関する疫学,病態は明らかにされておらず,出生前所見からの予測法は確立していない.本検討の目的は,TTTSを発症していない一絨毛膜双胎において,出生後の循環管理の要否と関連する出生前の因子を明らかにすることである.
【対象と方法】
2005年4月から2017年10月までに当科で出産した一絨毛膜双胎のうち,TTTS,双胎貧血多血症,一児死亡例,染色体異常や重篤な胎児異常を合併した症例を除外した319例,638児を対象とした.全例帝王切開による分娩である.出生後に持続する低血圧,ejection fraction(EF)の低下を理由に強心剤(カテコールアミン,PDEⅢ阻害剤)を使用した症例をそれぞれ低血圧群,EF低下群とした.出生前の超音波所見および周産期情報と強心剤使用との関連を検討した.双胎のうち出生体重がより大きい方の児を大児,より小さい方の児を小児とした.
【結果】
319双胎において25例(7.8%)で強心剤の投与を必要とし,そのうち8例で両方の児に必要であった.全638児のうち,17例(2.7%)が血圧低下群,16例(2.5%)がEF低下群であったが,EF低下群の約9割が大児であった.EF低下群はコントロール群と比較して,有意に分娩週数が早く(33週2日 vs 36週6日 p<0.01),Discordant rate(DR)が大きく(0.206 vs 0.095 p<0.001),大児である頻度が高かった(87.5% vs 47.4% p=0.0037).出生前の超音波所見では,EF低下群では有意に心胸郭断面積比(CTAR)が大きく(42.0% vs 32.8% p<0.001),三尖弁逆流(TR)の頻度が有意に高かった(66.7% vs 7.3% p<0.001).低血圧群ではコントロール群と比較して有意に分娩週数が早く(31週4日vs 36週6日 p<0.001),出生体重が小さかった(1683g vs 2256g p<0.001)が,大児と小児で同等の頻度で起こっており,CTARに有意な差を認めず,TRの頻度にも差は無かった.大児においては分娩週数が早いこと,出生体重が小さいこと,DRが大きいこと,CTARが大きいこと,TRがあることがEF低下と関連しており,心拡大を認めた中ではより早い時期の心拡大確認が関連していた.小児においては分娩週数が早いこと,出生体重が小さいことに加え,相手の児のCTARが大きいこと,早い時期での心拡大確認がカテコールアミン使用と関連していた.
【結論】
一絨毛膜双胎の小児においても大児と同じく出生後に集中的な循環管理が必要となる可能性があるが,その臨床像は大きく異なっており,小児と大児で病態が異なる可能性がある.発育差のある一絨毛膜双胎の大児に早い時期から心拡大を認める場合は,心拡大の程度が増悪しないか経過観察する必要がある.大児の心拡大が著明となる場合は,TTTSを発症しなくとも両児ともに出生後集中的な循環管理を要する可能性があるため注意が必要である.