Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科1 子宮頸管長計測の意義を問い直す

(S360)

子宮頸管長計測についてのレビュー(早産予防の視点から)

Transvaginal sonographic cervical length screening for the prediction of preterm birth: A systematic review

深見 武彦

Takehiko FUKAMI

日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科

Nippon Medical School Musashikosugi Hospital Department of Obstetrics Gynecology

キーワード :

【はじめに】
1990年代に入ると経腟超音波断層法が導入され,同法を用いた子宮頸管(以下頸管)評価が急速に広まった.そして妊娠中期に頸管長が短縮した妊婦は,早産リスクが高いことが明らかにされた(Iams NEJM 1996).早産は新生児死亡や合併症・後遺症の主たる原因であるから,早産予防は非常に重要な課題である.早産予防のための戦略として,まず早産リスクの高い妊婦を同定することが重要視された.経腟超音波断層法による頸管長測定は,その目的に合致した最も有用な検査法として世界的に認められてきた.本発表では,早産予防戦略からみた頸管長測定を中心にレビューをする.
【妊娠中の頸管長の変化】
妊娠中の頸管長は,およそ妊娠14-28週までほぼ一定に推移妊娠28週以降は徐々に短縮していく(Berghella Obstet Gynecol 2007).
【頸管長スクリーニングの実際】
頸管長スクリーニングは妊娠16-24週において早産既往のない妊婦に対しては1回,早産既往のあるハイリスク妊婦に対しては複数回のチェックが推奨されている(Parry AJOG 2012).頸管長短縮のカットオフ値としては<20mmまたは<25mmとする報告が多い(Crane Ultrasound Obstet Gynecol 2008).
【頸管長と早産リスク】
頸管長が短いほど,またより妊娠早期に短縮するほど早産率は高くなるが,頸管長が0mmであっても100%が早産(<35w)するわけではない(Berghella Obstet Gynecol 2007).わが国の報告でも,妊娠20-24週の頸管長が<20mm,<25mmの場合,妊娠34週未満の早産率がそれぞれ75%,33%であった(Shiozaki J Obstet Gynaecol Res 2014).
【早産予測に対する頸管長短縮所見の有用性】
単胎妊婦で妊娠14-20週の頸管長が<15mm,<20mm,<25mmの場合,早産予測の陽性尤度比はそれぞれ142,35,13であった(Honest Curr Opin Obstet gynecol 2012).同様に妊娠18-24週で頸管長<15mm,<20mm,<25mmを指標とした場合,早産予測の陽性尤度比はそれぞれ>40,>10,>5 であった(Silva Perinat Med 2014).いずれも陽性尤度比>5であることから,単胎妊婦の早産リスクの高い妊婦を正しく診断する検査法として,妊娠中期の頸管長測定は有用な検査法であるといえる.一方陰性尤度比は0.6-0.9であったため,早産の除外診断には適さないといえる.
【頸管長スクリーニングは全妊婦に行うべきか】
早産予防の見地から全妊婦を対象に頸管長スクリーング行うべきかについては,未だ議論の余地があり統一見解には至らない.各国のガイドラインを検証すると単胎の早産既往妊婦に対しては,ほぼ全てのガイドラインで頸管長スクリーニングが推奨されている.一方でローリスクを含む全妊婦に施行するかについては,未だ推奨しないとする場合が多い(Medly BJOG 2018).これはローリスクの頸管長短縮例に対する早産減少に有効な介入法のエビデンスが確立されていないことに起因すると考えられる.
【おわりに】
頸管長短縮例に対する有効な介入法(プロゲステロン,頸管縫縮術)について,新たなエビデンスが集まりつつある.よって今後頸管長測定のタイミング,対象者,カットオフ値については新たな見解が出される可能性がある.